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新たな虫?

 「そういえばお兄ちゃんはなんでマーロンさんの所に?」


 レベルアップを踏まえるなら、先にテイムしておいた方が効率が良いだろう。

 との事で、昼間の草原にてシェーナがウサギを追いかける光景が目に移る中、インは隣にいるハルトに問いかけた。


「いや、元々はマーロンさんに武器を作ってもらおうと思ってな」


 その際に素材を要求され、いつものメンバーと取りに行こうとしたところ、シェーナしか都合が合わなかった。

 そしてシェーナは、最近妹に課題ができてしまったとの事で、行く代わりに相談に乗っていたらしい。


「どうフィート?」


 そうハルトが成り行きについて話している間にも、シェーナはウサギを捕まえていたようだ。

 素手で。


 もうダメージを負うような相手でもないらしい。

 妹に意気揚々と見せたものの首を振られたためか、そっと逃がしていた。


「ウサギは嫌?」


「……イヌ」


 フィートは口にしてからハッとし、シェーナから首を逸らした。


「犬かー」


 フィートはしばらく目を閉じ「うーん」と思考したのち、ハルトへと申し訳なさげに両手を合わせた。


「ごめーんハルト。やっぱあたしも無理そう」


 恐らく行くといった手前、断るのは忍びなかったのだろう。

 しかし、ハルトは首を横に振った。


「いや、手分けして探そう。人数は多い方が良い。それに」


「うん、お兄ちゃん! アリは嗅覚が優れているんだよ! だから手分けする必要すらないと思う」


 そうインが言うと、今まで売らずにとっておいたオオカミの毛皮を取り出した。

 決して、忘れていたわけではない。特に売る理由もなかったからだ。


 他にもその他諸々の倒してきたボスのドロップが入っているが決して、忘れていたわけではない。


 これが終わったらあらかたは売りに行こうと心に決め、アンににおいを嗅がせて大体十分ほど、何とかこの辺ではレアのオオカミを探し当てた。


 今はシェーナの舐め回す指にかかり、お腹を晒して降参アピールをしている。

 野生動物とはいえ懐かせるとは、見事な指である。


「そういえば魔物のえさは? 『調教』アビリティも取っていないような」


「あっ、魔物のえさなら私が持っているよ! あげる!」


 っと、インはステーキ状になった魔物のえさを二つ取り出しフィートに渡した。


(ホントはファイみたいに五つくらい上げたかったんだけど……。ごめんね、フィートちゃん)


 補充する時間は無く、二つしか持っていないことを悔いるイン。

 しかしもし、インベントリに素材の肉があったところで、インがここで料理を作る事はできない。


 なんせ、過去に壊滅的なインの料理センスのせいで、マーロンの工房でしか魔物のえさを作らない様にと、ハルトに約束というの名の鎖を施されているのだから。


 とはいえ、肝心の『調教』アビリティが無ければ話は進まない。

 フィートの反応を見る限り、もうアビリティの『自由枠』もないうえ、取得の仕方も分からないようだ。


 助けを求めるような眼差しをインに向けてくる。

 が、意外な人物が横から声をかける。


「ああっ取得の仕方なら確か、まだ敵対している魔物と仲良くなる事じゃなかったか? もしくは、力で無理やり言う事を聞かせるとかだったはず」


「「えっ?」」


 まさか『調教』とは無縁であるはずのハルトから、方法が飛び出て来るとは思わなかったのだろう。


 インとシェーナは、目を真ん丸にして見つめると、ハルトは頭を掻きながら「インの為にな」と言葉を続けた。


 そうと分かれば後は早い。

 フィートは身を縮め、怯えた様子でオオカミへと近づいていった。

 吠えるオオカミ。シェーナは目を向けてきたフィートへ頷いて見せる。


「なんか、懐かしいな。インの時は……、そうでもなかったな」


「アンちゃんは最初から大人しかったもんね。ねっ、アンちゃん」


 恐らくだが、腕に抱かれた時点で察したのだろう。「可愛いぃぃぃ!! この触角に瞳……良い」っと、狂気的な笑顔で頬ずりしてくる主の兄に、諦めと達観したような目を向けていた。


 せっかく待つ時間も暇なので、インがこの辺で魔物のえさの材料となる素材を蓄えていると、兄から『調教』が終わったと連絡が届く。


 至急インが戻ると、フィートの周りをオオカミが駆け回っていた。今回は二つでも足りたようだ。


 彼女も彼女で、ゆっくりと腕を伸ばして恐る恐る撫でているところを見るに、『調教』を取るのは正解だったようだ。


「ありがと、ハルト! インちゃん! やっぱり欲しくなるな。これが終わったらあたしも『調教』取ろうかな」


「それはいいが、次はインだからな。何をテイムするつもりなんだ?」


 ハルトの疑問に、インは堂々と答えた。


「クモちゃん!」




「さっきからずっと思ってたけど、あんたの妹って、その……」


「分かってる。言うな」


 大規模テロ、もといインの『調合』という名の『料理』がマーロンの店で行われている最中、イン以外のメンバーは外に避難をしていた。


 最初シェーナは、とても失礼な奴とでも言いたげな目をハルトに向けていたようだが、窓に黒い煙が映った途端にその色も消え失せていた。

 今ではむしろ、一緒になって遠い目をしていた。


 しばらくすると、中から煤だらけになったインとアン、そしてマーロンが姿を現した。


「終わったよ!」


「ああうん、お疲れ二人とも」


 インが手を上げて言うと、ハルトが引き気味に労いを言葉をかけた。主にマーロンへと。


「ぜんっっっぜん、大丈夫よっ。それより、クモなら確か南の森にいるわ。という訳でお願いね、ハルト君?」


 マーロンはハルトへと空き瓶をいくつか手渡した。


「へいへい、虫の素材ね。あそこは多いからなー」


「パラダイス!」


「反応するな、虫魔人」


 虫が多いと聞いて、瞳を輝かせたインにツッコミを入れるハルト。


 しかしインはもう既に、自分の世界へと入り込んでいた。

 クモちゃんとは答えたが、もしかしたら他にも何かいるかもしれない。

 ハンミョウやクワガタ、蝶にサソリとテントウ虫、なんならと次々に思い浮かべる。


 思えばようやく森の中に入れるのだ。

 いろいろすっ飛ばして竜と戦う羽目になっていた。が、インがやりたいのは虫だけをテイムしてゲームをやる事である。


 冒険させてくれるピジョンに感謝はしている。どこに意外性のある虫がいるのか分からないのだから。

 この世界、ゲームについても詳しいのだから。


 だとしても限度がある。流石にあんなものを相手にするには、少しどころではなく早すぎるのだ。

 むしろ良く死なずに生き残れたものだと、インは心の中でお礼と一緒に愚痴た。


 それはそうと、マーロンの頼みに二つ返事で了解したハルトは、「何か中心に取って来てほしいものは?」と続けた。


「主にオオムカデの毒。次いでクモの糸。それが無理なら、何でもいいから癒し系等の体液」


「癒し系等なんて一等級、あんな森にいないだろ。了解。とりあえず行ってくる」


 ハルトが言ってくると告げれば、インとシェーナ、フィートも一緒になって行ってくると言葉にした。


「はい、行ってらっしゃい」


 そうして手を振るマーロンの見送りを受け、イン達一行は南の森へと向かいだした。




 うす暗い森。

 太陽が差し込んでいるはずだというのに、木の材質故か、少しでも独り占めにする為に傘をめいいっぱい広げているのか、あたり一面薄い闇に包まれていた。


 唐突に、不可視の何かが鳴いた。鳥だろうか、それとも虫だろうか。ここからではその正体が分からないが、森の暗がりようにインは近くのハルトに抱き着いた。


「おーおー、兄弟仲が良い事で」


「誰にだって怖いものはある」


 ハルトは大丈夫だからと一声かけ、インの頭を撫でた。

 手のひらから伝わる暖かさ。

 インがそっとハルトから離れるのとまったく同時のタイミングで、カエルか、それともまた別の虫が低い声で鳴き、今度はフィートがシェーナへと抱き着いた。


「姉妹仲が良いようだな」


 ハルトが微笑すれば、シェーナはうぬぬと唸った。


「それよりお兄ちゃん! ムカデちゃんは? クモちゃんは? サソリちゃんは?!」


「待て待てっ! 復活が早いな、おい。歩いていればその内出るだろ」


 その言葉通り、イン達が森の中に入り少しして、早速一メートルはありそうな蝶が飛び立った。


 青い光沢。舞い落ちる煌めく鱗粉。優雅とも、可憐とも呼べる魅惑な動きで羽根を動かし、うす暗い森で目立っていた。


「見た見たアンちゃん! すごいっ、すごいよねっ! ッッッ!」


「落ち着けイン、もとい虫エルフ。とりあえずいったん落ち着け。二人はどうする?」


 息を荒くするインを窘め、ハルトはシェーナとフィートへ向き直る。


「そうだね。パス……とか?」


「……」


 シェーナは顔色を青くして苦笑、フィートは無言でテイムオオカミのウルへと抱き着いた。


 二人の反応に「だよなー」と、納得がいくような声音で頷くハルト。


(だよなーってなに!?)


 女子と男子問わず、虫が苦手な子が多いと頭で理解はしている。

 しているが、インとしてはこう思わざる負えなかった。


(流石に虫が苦手な人多くない?)


 そのとき、木の陰からひとつの影が飛び出した。

 黒く、少し赤が混じった鎧。左右からは、細長い六本の足が伸びていた。

 体は何かに潰されたかのように平べったかった。そして最も特徴的なのは、腕のように左右に張り出した触肢(しょくし)

 あまりにも発達しているのか、もはや鎌であった。


「ちょっとちょっと、エイリアンが生息しているとか聞いてない! 聞いてないんだけど!!」


 その容姿を、シェーナは一言で表した。


「……」


 フィートはあまりの生物に、シェーナの袖を掴んだ。


「おいおい、流石にやばくないかこれ。主に見た目が」


 ハルトは武器を抜き放ち、やはり一メートルはある生物から、みんな庇うように正面に立つ。

 が、夢中になったインには届かない。

 インはハルトの隣をすり抜け、かの虫の名を叫ぶ。


「もしかしてもしかしてしなくとも! ウデムシィ!」

 伏線とかじゃなく、単純に忘れていた。


 というかあのえさ、オオカミから取っていたような……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 狼の肉を狼に与える…ひどい(笑)
[良い点] ウデムシの採用をしてくださりありがとうございます!今後の活躍・進化を楽しみにしております! [一言] まだ募集をしておられるなら寄生虫の案でタイノエとかいかがでしょうか?倒したモンスターの…
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