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テイム仲間

「お兄ちゃん!」


 装備類もろもろが変わっていたせいで、後ろ姿だけでは気づきにくかったが、確かにハルトだ。

 自分の兄だと気づいたインは、笑顔で近くまで駆け寄った。


「おにいさんの妹?」


 そう確かめるように言ったのは、ハルトの隣にいる小学生くらいの小さな女の子。インと同じく耳が尖っているのをみるに、エルフだろうか。

 茶色い髪をツインに仕立て、少し消極的な印象を受ける彼女は、インの姿を見るとすぐ、もう一人の女性と思しき人物の後ろに隠れた。


「ハルトの妹? あの魔女っ娘ちゃん以外にいたんだ。あたしシェーナ。よろ」


 インに対して手を振り、「なんで教えてくれなかったの?」と、ハルトを睨みつける高校生くらいの女性。

 こちらは髪はショートに揃えられており、活発そうな印象だ。彼女は足に隠れた女の子を、「ほらほらフィートも」と前に突き出した。


「…………」


「えっと、私はインで、こっちは相棒のアンちゃん」


 無言で下を向く女の子に、インがアンを持ち上げて見せてやると、途端にまた隠れてしまった。

 ハルトの言いつけを守ったのにと首を傾げるインに、申し訳なさそうにシェーナが口を開いた。


「ごめんねー。この子はフィート。あたしの妹分のような物かな。引っ込み思案だけど、仲良くしてあげて」


「そうなんですか。フィートちゃん、よろしくね」


 インが手を伸ばすと、隠れてしまうフィート。あははとインが苦笑し、「良い子だから。ごめんね」とシェーナは自分の頬を掻いた。


「それで、インは何をしに?」


 と、ハルトに聞かれたところでインはここまでの経緯を大方話し始めた。

 新しい仲間を増やせるようになった事、クエストをやっていて、クリアしたもののそのNPCにLVが低いから鍛えて来いと言われた事。

 さっきピジョンと別れた事、どこでLV上げすればいいかマーロンに助言を貰おうとしたら、偶然出会ったと。


 精霊樹の事は公表しないでとピジョンに道中頼まれていた為、そこだけを切り取り大まかに話し終える。

 この話に一番に反応したのはシェーナだ。といっても、ピジョンという部分にだが。

 もう上級プレイヤーあるあるなので、インはさっさと誤解を解く。友達ではあるけど、変なことはしないと。


「LV上げか。それなら俺たちと似た理由だな。一緒に来るか?」


「行く! でもいいの?」


 ハルトのLVはインを既に遥か超えている。きっとシェーナの方もインが見たことのない装備に身を包んでいる為、同様だろう。

 となれば、LV上げを必要としているのはフィートなのだろう。そう考えたインの予感は的中した。

 

 シェーナ曰はく、サポートに特化するあまり、フィート単体でどこか行く場合、自分を守るすべはないのだと。

 普段はパーティだからそうそうないが、このまま続けていれば、ひとりで戦わないといけない場面が来るだろう。

 その為にもと、今こうしてインと同じく相談を受けてもらっていたようだ。

 そのとき、ハルトが妙案だとばかりにインの両肩を優しく叩いた。


「そうだよ! テイムとかどうだ?」


「テイムねー。……無理じゃない?」


「そうか? 良いアイデアだと思うが。魔物に守ってもらうってな」


「いやそうじゃなくて。テイム自体はあたしも妙案だと思うよ。でもねー?」


 と、シェーナはフィートへと視線を移す。


「フィートは大丈夫そう?」


 その言葉には、ちゃんと世話できるのか。ちゃんと面倒を見ることができるのか。という意味が込められているかのようだ。

 仲間になるとはいえ、元は魔物。仲間になるまで、敵対して襲ってくる存在であるうえ、問題点は他にもある。


「アンちゃんも、ファイとお兄ちゃんに弱いって言われたもんね」


「低LV帯ならともかく、今は即戦力にならないってところだな。元々『調教』は不遇だし」


 思えば雑魚中の雑魚だったアンがここまで良く成長した物だなと、どこか思うところがあったのか懐かしそうにハルトは頷いた。


 それはさておき、フィートは誰かに顔を動かし首を横に振る。どうやらダメそうだ。テイムという案も没になりそうになったところで、マーロンが助け舟をぶん投げた。


「フィートちゃん。一角ウサギとかネコちゃんとか、小動物系と冒険してみたくないかしら?」


「ウサギ……ネコ……?」


「無理にとは言わないわ。でもそんな可愛い動物に囲まれながらやるのも、私は良いと思うの。犬とか、ネズミとか、それこそ……人の好みはそれぞれだけどね」


 アンという全長40センチはあるアリを、頭に乗せるインへちらと視線を向けて言葉を濁すマーロン。

 小動物を引き合いに出したのが功を制したのだろう。フィートは「ネコ……ウサギ……犬……」と反芻している。


「どうだ? テイムできればかわ……可愛い! 魔物に守ってもらえるし、一緒に冒険とかできるぞ」


 ミミという十メートルはあるミミズを従えるインへとちらと視線を向け、ここぞとばかりに可愛いと畳みかけるハルト。

 だんだんシェーナも口に出すたびに自分も欲しくなってきているのか、「あたしも『調教』取ろうかな」と呟いている。


「…………じゃ、じゃあ、取って、見ようかな?」


 小動物というのは、フィートからすると魅力的に見えたのだろう。だからこそテイムしてみようと、フィートは控えめ気味に笑うのだった。

 次回こそ進みますので。

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