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武器探し? 2

  思いのほか強く叩きつけられたのだろう。「グエッ」と変な声を出して、マーロンはその場でうずくまる。

 それでも目の前にいるアンから逃げるためか、少しでも身をよじらせ避難させる。

 

「おにぃ、だから言っただろう。こうなると」


「ムカデとかサソリとかのドロップを平気で扱うから大丈夫だと思ったんだ!」


「生きているのは別だろう。おにぃ」


 ファイはマーロンに同情的な目を、慌てて言い訳をするハルトにはジト目を向けた。


「ムカデ、サソリ、いつか仲間にしたいなぁ」


「今度、おねぇにあのクエスト手伝ってもらおう」


 どこにいるのかなぁ、絶対仲間にしたいなぁと思考転換をしているイン。いつしかインが女性キラーになる日が来るのかもしれない。

 ちなみにサソリの天敵にムカデが入っているのだが、今は関係ないようだ。


「無理! 私生きている虫はホントに無理だから! どうにかしてぇ!」


「ここは主であるあねぇの出番であろう」


「可愛いと思うのに」


 むぅと膨れるイン。手を叩いて、「こっちこっち」とアンに両腕を広げた。

 その言葉にアンは振り向き、インの胸へと飛び込んでいった。


「ハァ、びっくりした。いったい何しに来たのよ」


 安堵の声を漏らし、マーロンは何をしに来たと腹立たしそうにハルトを睨みつける。


「いや、妹のインにぴったりな装備はないかと思ってな」


 インでも分かるほど、マーロンの目の色が変わった。


「妹の装備? インちゃん。フォンはいくら持ってるの?」


「えっと、400フォンです」


 元々の所持金は500フォン。一度神父にアンを復活させてもらったので、100フォン引いて400フォン。

 少し心もとない金額だ。マーロンは少し申し訳なさそうに首を振る。


「その金額だと、私の所じゃ何も買えないわね」


「そうですか」


 マーロンは生産職トッププレイヤーの一人だ。

 彼女の作る装備は、ハルトとファイは当たり前のように考えているが、そのどれもが高性能。

 適当に作ったとしても、そこらに売っているものと比べはるかに性能が高い。

 ポイポイと素材とお金を払える二人ならまだしも初対面。それも素材持ち込みもなし。

 特別扱いという前例を作ってしまうと、後で弊害が出てくることになるだろう。


 肩を落として落ち込むインに、ハルトが優しく手を添える。


「イン、さっき倒したマウスとアリのドロップ品はあるか?」


「ドロップ品?」


「あらあら、もしかしてゲーム自体初心者だったのね」


 マーロンはドロップ品についての説明をインに施した。

 インは胸に抱いているアンを、ハルトに預けてから確認する。

 中には初心者用ポーションのほかに錆びた剣、アリの皮が三枚と蟻酸の入った瓶が二本入っていた。

 自分の顔が埋まるくらいデカいアリを渡され、若干顔が引きつっているハルト。

 それに気づいていないインは、早速錆びた剣を取り出した。どうやら最初に戦ったマウスが落としたものらしい。


「錆びた剣ドロップしてたのか。運がいいな」


 インが見てない瞬間を狙い、アンを下ろすハルト。床を歩くアンから逃れようと、ファイはさっと距離を取った。


「良ければその錆びた剣。私が使えるようにしましょうか?」


「ホントですか! あっけど、フォンが」


「大丈夫、ただでいいわ」


 にこやかな笑みを浮かべるマーロン。

 曰はく、錆びた剣は『鍛冶』アビリティのスキルで錆びを落とすと、ランダムで何かの剣に変わるという。


 弱い魔物から落ちた品の為、そうそう良い物にはならないが、それでも今のインには十分役に立つ。

 なんだかんだ言っても、上級者として初心者を応援してあげたい。

 という建前に、単純にガチャを回すのと似た、ワクワク気分を味わいたいのも含んでいたりする。


「やって貰えるならお願いします!」


 インはすぐに錆びた剣を差し出した。しかし、マーロンは微笑みを向けるばかりで受け取らない。

 困惑の表情を浮かべるインの元に、ファイが横から入り込んだ。


「いいかおねぇ。渡すときはこうしてだな」


 FreePhantasmWorldでは、アビリティやスキルで物を盗まない限り、人の物を使用することができない仕様となっている。

 その為、渡すという操作を必要とする。そうじゃなければ、アビリティやスキルの意味がない。


 そんな説明を、中二チックの非常に伝わりにくい言葉で教えるファイ。

 勿論インは首を傾けるばかりで全く理解できない。そのせいか途中から。


「おねぇ。そっちの方を――」


「こう?」


「そうそう。それで、近くにいるマーロンさんを指名、完了のボタンを押す。うん、これで大丈夫のはずだから」


 部屋の隅の方でインと一緒に座り込み、ロールプレイを放棄していた。

 そんな光景を微笑ましく思ったのだろう、ハルトとマーロンも和やかに談笑する。

 ハルトの下にいるアンも、姉妹の話が終わった頃合いを見てインに近づいていった。


「はい、どうぞマーロンさん」


「ありがとう」


 今度こそマーロンはインから錆びた剣を受け取った。


「それじゃあ明日取りに来てちょうだい。もう、お夕飯の時間だから」


 時間を見れば、もうすっかり夕暮れ時を過ぎていた。


「いっけねマジだ! ファイ、イン。俺は先に夕飯つくりに戻る。ほどほどにな!」


「分かったぞ、おにぃ。紅蓮と灰塵の魔女であるわたしは、カレーを所望する。それとも手が必要か?」


「カレーか。具材買わないと」


「お兄ちゃん。私も手伝お――」


「ファイはインを見張れ。じゃあな!」


 早口で言い終えると、何かを恐れるようにハルトの体が光に包まれ、天に昇るかのように消えていく。

 ゲーム内でログアウトなどの、ワープをした時の演出だ。

 なんでと首をかしげるイン。全力で遊びに誘うファイ。それにマーロンの目元が引きつった。


「序盤は希少なもの以外、売っといた方が良い。調合アイテムが買えんし、何より意味がない」


「レア物? どうやって確認すればいいの?」


「それはだなおねぇ」と前置きを置き、ファイはさっきと同じように説明する。


「……アイテム欄の枠が一つ光っているでしょ? そこにアイテムがあるところを合わせると」


 初心者用ポーション


 初心者のためのポーション


 HPを30回復。


「出た!」


「何の特徴もなき物であれば何もないが、レアなものであれば、右上にレアと表示される。他のも見たらどうだ?」


「うん!」


 アリの皮


 アリが落とした少し丈夫な皮。強い個体ほど、より丈夫で軽くなる。

 防具や調合などの材料として扱われる。


 蟻酸Ⅰ


 アリが体内で作り、えさを弱らせるために使う毒。強い個体ほど、毒の効果が上がる。


 振りかけた相手に防御無視の毒Ⅰを、10秒間相手に付与する。


 薬草


 食べると体を癒してくれる不思議な草。


 ポーションの材料として使われ、そのままでもHPを10回復する。


「ま、ざっとこんな感じだ」


「へぇ~、面白い!」


 四つしかないアイテムを何度も確認するイン。そんな彼女に、マーロンは二度手を叩く。


「二人とも、お夕飯が出来上がるまで草原でお金稼ぎやレベル上げをしてきたらどうかしら?」


 この様子では店の中に居座られそうだと判断しての提案である。

 普段であればそれでも構わないのだが、あいにくマーロンもそろそろ夕飯を買いに行かなくてはならないのだ。

 それを表情と声で察知したファイは、インに告げる。


「マーロンさんの言う通り、時間は有限、刻一刻と一日は終わりに迫る。行こう、おねぇ。強いアンを見たいだろう」


(強い、アンちゃん……。多勢に無勢でも勝つアンちゃん。勝利の後に見せてくれる可愛いアンちゃん!)


 インは格段に強くなったアンを想像すると、自然と頬が綻び、現実のアンを持ち上げ笑顔を向ける。


「行こうアンちゃん! マーロンさん、ありがとうございました!」


「……また……いつでも……。お願いなんだけど、表の立て札を裏返しにしてもらってもいいかしら?」


「分かりました」


 インが元気な返事を返すと、マーロンも淡い光を伴ってその場から消えていく。

 残されたインとファイは外に出ると、頼まれた通りに表の立て札を裏返す。

 そのままの足で草原に向かい、ハルトから夕飯の連絡が届くまでアンのレベル上げに勤しむのだった。

 本来アリの視覚は弱く、聴覚もほとんど聞こえません。だいたいを嗅覚と触角で判断しています。ですがそれだと話し進まないのでこの形を取りました。

 なお弱いといっても虫の中では強い方なんですけどね。

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