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初依頼達成


「なんで運営はあんなもの実装しているのかな~」


「知らん」


 慌てて出てきた洞穴の前。よほど焦っていたのだろう。ピジョンとファイは、息も絶え絶えの状態でようやくまともに口を開く。


「あれ確か、カマドウマだったっけ」


「なんだそれは?」


「自分のおねぇちゃんから聞いた方が速いよ~、実際。私の口からは、黒光りするGと同じ不快害虫に分類されているとだけ」


「クソ運営め。女性限定の依頼でそんな虫を出すな!」


 そもそも女性限定の依頼で、リアルに作られた虫を出すなと憤るファイ。その横で、インちゃんみたいな女の子(変態)もいるからにゃ~と、どこか他人事に考えつつふぅと呼吸を整えるピジョン。そして、この後どうしようかと洞穴へと振り向いた。


「それより、インちゃん残して来ちゃったけど、大丈夫かにゃ~?」


「………………行こう」


 まるで魔王城に踏み込む勇者のような面持ちで、ファイは洞穴へと一歩進む。その瞳は、きもくて苦手な相手だとしても、それが幽霊嫌いなおねぇの為なら構わない決意が宿っていた。震える足を抑え、いざその一歩を踏みだし――


「置いてくなんて酷いよ! ピジョンちゃん! ファイ!」


 インが洞穴から姿を現した。見たところ外傷もない。半泣き状態ではあるものの、息を切らしていない様子から見て、逃げ帰ってきたわけでもないようだ。


「え~っと、大丈夫だったのかにゃ?」


「大丈夫じゃないに決まっているよ!!!」


 ピジョンとファイに、自分の思いを叫ぶイン。その報復と言わんばかりに、アンとミミが二人へとゆっくりと、それでいて明らか敵意を持って近づいていく。

 図らずとも、逃げた先でもう一度虫と戦わないといけない状況。ピジョンとファイは合わせた様子も無く、


「すまん」


「ごめんにゃ~」


 頭を下げて謝るのであった。


  *  *  *


「えっと……、実はアンちゃんが全部倒しちゃって」


 二人の謝罪を受け入れたインは、あの暗闇の中での出来事を身振り手振りで説明し始める。

 実は最初、カマドウマもいるんだと感心して見入っていたのだ。彼らは閉所や暗所を好む習性がある。それが嬉しくて、他にも何か反映されているのだろうかと少し観察していたのだが、これは依頼だ。

 家を買う為にもファンがいる。だからこそと、慌てて気合を入れた直後であった。


 アンが全てを倒してしまったのは。


 流石はアリの嗅覚。暗闇だろうとお構いなし。不意打ちにあったのは最初だけ。その最初も、カマドウマは自分の跳躍力を抑えきれず、壁から床、床から壁に跳ねたところで激突して光に変わってしまった。

 奥に行けば持っといただろうが、暗闇の中一人は怖い。事前に聞かされていた依頼達成の最低数だけ倒しきり、すぐ帰ったからこそインには何の危険もなかったわけだ。


「まさか……、あれをテイムしようとは流石に考えてないよね~?」


 ピジョンの言うように、カマドウマはアブ等と同じ不快害虫の一匹。田舎で過ごしてきた虫が大丈夫な人、好き人ですら、その気持ち悪い見た目に根を上げるほど、強烈な印象を持っている。

 さらに拍車をかけるのはその跳躍力といっていいだろう。長い後ろ脚を使い、奴らは人の顔目がけて飛び掛かってくる事もある。一切の慈悲なく、いきなり目の前に躍りでる。


 まさかそんな不快害虫をテイムして、近くに置こうとは思わないだろう。だがインは違う。あのミミズですら彼女は仲間にしている。ゴキブリにすらちゃん付けしている。害虫にですら、あの愛嬌ある笑顔を向けている。可能性はゼロではない。果たして、その答えは――


「う~ん。今はムカデちゃんやクモちゃんの方が捕まえたいかな」


「そうだよ――」


「よかったぁぁぁーー!!」


 ロールプレイを放棄、ピジョンの言葉すら遮って歓声を上げるファイ。それほどまでに、あの虫だけはどうしても近くにいてほしくなかったのだろう。日の元にいるためか、ミミから分離したインに抱き着いた。


「お願いだから、ゴキブリ類とか気持ち悪い虫だけはテイムしないでおねぇーー!!」


「気持ち悪い虫なんていな――」


「その言葉はこの場面で言うセリフじゃないよ~インちゃん?」


 そもそもカマドウマは、森林生態系のサイクルを支えるといった面では益虫に入る。そう、反論しようとしたインの口に、ピジョンは早急に手を覆いかぶせた。


 その場で膝をつき、今度はファイの方が泣き崩れる。


「えっとえっと、だ、大丈夫だからファイ。ねっ? 大丈夫だから」


「もしあんなのがおねぇを汚すと思うと。わたし、わたし、グスン」


「そ、そう! ファイの言う気持ち悪い虫ちゃんはテイムしないから。ねっ? これでお願い」


「おねぇにとって、気持ち悪くない虫ってなにぃー!」


 もっともである。

 カマドウマを気持ち悪いと判定しないインが、一般的に気持ち悪いとされる虫を判別できるだろうか。無論、百%無理である。痛いところを突かれ、助けを求めるようにピジョンへと顔を向ける。


「魔女ちゃん。判定は私がやるよ~」


「クソ鳥に言われても……!」


 途中まで言いかけ、ファイは袖で涙を拭いて立ち上がると、ピジョンをじっと見つめる。虫に対しての信頼が、姉よりも害獣に勝った瞬間であった。


  *  *  *


 その後ファイは、いつも通りロールプレイを戻した。ここに長居する理由は、イン以外は持っていない。足早とインは、ファイとピジョンに手を引かれエルミナへと戻る。


「じゃ魔女ちゃんよろしく~」


「なんでこのクソ鳥はギルド登録していないんだ」


「ごめんねファイ」


「なんでおねぇもやっていないんだ」


 ギルドに登録していない二人の代わりに、ファイが依頼達成の報酬を受け取りに行き待つこと数分。再び外に出てきたファイから、そっと二万フォンを隠れて手渡される。家を買うのにどれほどの資金がいるのかは分からないが、これだけでも現状かなりの額だろう。


「それではな、おねぇ」


「またね」


 そそくさと走り、その場から抜け出そうとするファイ。この後何か用事でもあるのだろうか。身の軽さに、ピジョンの目が光ったのをインは見逃さなかった。


「おっと、どこに行くのかな紅蓮と灰塵の魔女ちゃん? こっち、来てもらおうか?」


 こうなったピジョンから逃げるのは至難の業であろう。ピジョンの言葉と共に、ファイはダッシュする。しかし魔法使いと盗賊では、割り振る速度が違う。あっけなくファイは捕まってしまい、どこかに連行されていく。


(何をしているんだろう……。聞いても話してくれなかったし)


 再び戻ってくるファイとピジョン。そしてなぜか、ファイに報酬の倍額が入った袋を押し付けられそうになる。

 

「何も言わずに受け取れ」


「いやいや、ファイからは受け取れないよ」


「家を買うのだろう? なら必要になるはずだ」


「ファイからはもう十分貰ったよ。アンちゃんをテイムできたのだって、ファイから貰った魔物のえさだから!」


 インは初めてアンをテイムするときに貰った魔物のえさを思い出しつつ、手と首を振る。そしてちらとピジョンへと目を向ければ、下手な口笛を吹いて視線を逸らされる。


「ピジョンちゃん。ファイに何を吹き込んだの?」


「い~や、な~んにも?」


 怪しさしかない。その何とも言えない道化のように白を切る様子からは、怪しさしか感じない。ともかくファイには何度も助けてもらったから、分からないけど何かあるのならこれでお相子と、インは報酬を断った。


「おねぇ……。そうだな。わたしの施しのおかげでそこのアリをテイムできたのだからな」


「あのときはありがとね! ファイ!」


 いつもならファイの方から飛び込むところを、今回はインから抱き着きに行く。嫌われているのを分かっているのか、アンは自重して二人から離れているようだ。そんな二人の姉妹愛に「仲睦まじいね~」と自分を棚に上げるピジョン。


「ミミちゃん、出ておいで」


 だからだろうか。不穏な空気を纏わせミミを外に出すインへ、引きつったな目を向けるのは。ファイがそっと、数歩離れて我関せずといった様子で両腕を組んでいるのは。


「で、ピジョンちゃーん。ファイに何を吹き込んだの?」


「……」


 得も言われぬ迫力に、そっと無言で回れ右をするピジョン。そして舗装された地面を蹴り上げるのであった。




 場所は一気に変わって、リアル学校での昼休み。杏子がいつも通り弁当箱を開封すると、ゲームではピジョン事、葵が教室を訪ねてくる。


「食欲無くす中身だね~」


「お兄ちゃんが私専用で作ってくれるんだ。美味しいよ!」


 ありきたりかどうかすら怪しい話題。ゲームでの会話を繰り広げて一緒に昼ご飯を食べていると、葵が口の中に箸を入れつつ切り出してくる。


「杏子ちゃん聞いた~? あるプレイヤーが建国したんだって~?」


「行儀悪いよ。それで行くの?」


「行ってみる価値はあるでしょ~」


 国の名前は東風谷というらしい。場所は最初の草原を突っ切った先にの第二の町。これをさらに進んだ先に建国されたのだとか。そう面白そうにピジョンは語っていた。




 ゲーム世界に突入し、集合場所でピジョンと合流。軽い挨拶を交わしてから、東風谷を目指して草原へと向かう。

 いくらHPが一だとしても、この場所でアンを倒せるものなど誰もいない。いたとしてもピジョンやインもいるので手を出す事すら難しいだろう。そのまま歩き続け、前ボスと戦った香る薬草が群生する地帯に到着する。

 あの時は数歩で遠吠えが聞こえてきたはずだが、一度倒した後だからか何も起こらない。

 ピジョンが言うには、戦おうと思えば戦うこともできるらしい。らしいが、今回は目的が違うのでそのまま通り過ぎる。魔物のえさが必要になるときが来れば、また来る事になるだろう。


 そうして何か事件が起こるわけもなく、イン達は第二の町に到着する。ここもエルミナどうよう、多くの雑貨が売っている。限定名物などもあるらしいのだが、今回は観光目的で来たわけではない。すぐ第二の町を抜けて、一行は東風谷と呼ばれる国を目指す。


 出てきた先はまたもや草原。配置や魔物など、劇的な変化が特に起こる事もない。久しぶりに緩やかな道のりとなっている。出てくる魔物なんて、大抵ピジョンとアンが倒しきってしまうので、インが危険になる事もない、

 そして辿り着いたのは、岩肌が露出した昔ながらのバトルフィールドのような場所にでた。


 インが足を踏み入った時、それは起こった


 投稿一旦止めます。完全に私の都合です。申し訳ございません。


 *流石の杏子も、誰かと食事をとるときは虫の話題は出しません。*食事するときは

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