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目覚め

 昨日の18時のPVが444で思わず笑いました。

「ううっん……。ここは?」


 夢うつつ杏子が目を覚ましたそこは、自分の部屋。周りをキョロキョロと見渡してみれば、勉強机の上に置かれている学校の教材。合わせ鏡のように配置されているすぐ近くのベッドには、VRギアを被った妹のほむらがぐっすりと目を閉じている。


(そうだ。私はさっきまでイベントをやってて、ライアを――)


 そこまで考えた杏子の右手が、罪悪感で震えだす。胸が過呼吸を起こしたかのように速くなって苦しい。額からも徐々に汗が浮かび上がってくる。ゲームとはいえ、現実にいない存在とはいえ、自分のこの手で活動を停止させたことが、重量では測れない何よりの錘となって押しつぶそうとしてくる。


 乱れた呼吸をしている杏子のすぐ近く、布団がもぞもぞと動き起き上がるほむら。彼女は弾けんばかりの笑顔を浮かべて、大きく腕と背中を伸ばす。


「おねぇ! イベントお疲れ!」


「ほむら……。うん、お疲れ」


「どうしたのおねぇ。元気ないじゃん?」


 ほむらは心配そうな表情で自分のベッドから出ると、杏子のベッドまで行き後ろから抱き着いてくる。


「ちょっとね――」


 途端、頭が内部から締め付けられるかのような痛み。ギリギリと訴えてくる痛みに、杏子は片手で頭を押さえつける。


「痛い――!」


「ああー、イベントって三時間の事を三日でやるからね。最初の内は脳に多少なりと負荷がかかるけど、別に健康に被害が出るってわけでもないから時期に慣れるよ。ひとまず横になった方が楽だよ」


 懐かしむようにほむらは、杏子が横になるのを手伝ってくれる。それからすっと離れ、「少ししたら収まるから。しばらく安静に」と自分のベッドへと戻り杏子を見守ってくる。

 人というのは、苦しいとき誰かがすぐ傍にいてくれると不思議と安心するもの。次第に頭の痛みは引いてくる。


「ほむらも前に同じ事をやったの?」


 ようやく動けるようになった杏子は体を持ち上げると、ほむらに気になった事を尋ねる。

 その質問に、ほむらは頷く。


「やったよ。一度だけね。でもこれ、夢を見ているようなものだから」


 そもそもVRMMOは、強制的に一時間を一日と錯覚させるほどの睡眠状態に陥らせるため、脳に負担がかかってしまう。

 とはいえその現象が起こってしまうのは、慣れない初めての人達だけだ。レム催眠。夢を見ているような状態になっているだけである。


「でもイベント最中で、ムカデちゃんやアブちゃん、ゴキブリちゃんにサソリちゃんと他の虫ちゃんが混じったパラダイスな夢を見たはずだけど?」


「わたしとおねぇって本当に同じ女の子だよね……。それこそ姉妹なはずだよね……」


 サラッと杏子の女子性を疑問視するような言葉を呟くほむら。しかし杏子には言っている意味が全く分からず、その場で不思議そうな顔になる。

 ほむらはハァと、一度ため息をつき、反り身ぎみにベッドに体重を預けて口を開く。


「夢の中で夢を見る事ってあるでしょ。起きたと思ったらまだ夢でしたー! って奴」


多重夢(たじゅうゆめ)って奴だよね。明晰夢(めいせきむ)ともいうんだっけ。なるほど、納得がいったよ!」


「わたしは全く納得がいかないけどね」


 どこかくたびれた状態でほむらがベッドから身を放すと、そのまま元気になった杏子に進み再びダイブ。

 抱き着いて顔を摺り寄せてくるほむらに、杏子は「甘えんぼ」だなとその頭を優しく撫でる。これが本来杏子達、氷雨家の光景。むしろゲーム内でやってこない方が珍しいくらいだ。

 きっと人前では恥ずかしいからやろうとしないんだなと、杏子は精一杯ほむらを許容するのだった。


 それから数分後。現実では三時間だが、三日間ぶりにあう兄の悠斗がノックをしてから扉を開けて顔を見せ、これから夕食だと告げる。

 杏子に十分ほど抱き着き猫のようにゴロゴロしていたほむらも離れ、二人部屋から出て階段を下りる。

 三人で食卓を囲んで話し合えば、ゲーマーが二人もいるからか話題はとうぜんゲームへと流れ着いた。

 ひとりで辛くなかったか、偶然居合わせる事になったクソ鳥に何かされなかったのかと展開され、最後に勝敗の話しに行きつく。


「おねぇの方はどっちが勝ったの? ちなみにわたし達は当然侵略者側!」


 相も変わらず真っ赤過ぎて、もう原形を留めていない何かを口に運び質問してくるほむら。その好奇心の塊とでもいうべき態度に、杏子は口を伸ばして無理やり笑みを作る。


「私達はライ――、魔法少女側が勝ったよ」


「……どうした杏子? 元気ないぞ。悩みがあるんだったら言ってみ? こういう時経験者を頼ってくれていいんだからな」


 柔らかく、安心させる声音で自分の胸を叩いて悠斗が諭してくると、ほむらも便乗してくる。


「そうだよおねぇ。旅は道連れ世は情けって言うでしょ。水臭いよ?」


「うん、ありがとう! でもごめん。これは、私の問題だから」


 箸を落としてうつむき気味に、杏子は答える。分かっているからだ。ライアのことを話せば、ほむらと悠斗はきっと、自分を慰めようとしてくれる事を。最大限の言葉を持って、あの手この手で肯定してくれる事を。

 しかし杏子が欲しいのは許しではない。かといって非難されるような言葉が欲しい訳でもない。今はとにかく、踏み込まないでほしいだけなのだ。


「……ま、杏子がそういうならそうしておこう。話したくなったら、いつでも話してくれていいからな」


 悠斗は杏子の気持ちを汲んだのか話を切ってくれる。そしてそれは、ほむらも同じ。少し不満げな表情を残しつつも杏子を見ると、まったく別の話題に切り替えてくれるのだった。


「でもイベント最中で、ムカデちゃんやアブちゃん、ゴキブリちゃんにサソリちゃんと他の虫ちゃんが混じったパラダイスな夢を見たはずだけど?」


「わたしとおねぇって本当に同じ女の子だよね……。それこそ姉妹なはずだよね……」


(チョウやカブトならともかく、そのラインナップの虫が出てくる夢がパラダイスって何!? どう考えても悪夢だよねそれ!)


 つい口から杏子の女子性を疑問視する言葉を呟いてしまうほむら。対する杏子には何を言っているのか分かっていないのだろう。その場で不思議そうな顔になっている。ほむらはハァと、一度ため息をつき、反身気味にベッドに体重を預けて口を開く。


「夢の中で夢を見る事ってあるでしょ。起きたと思ったらまだ夢でしたー! って奴」


「多重夢って奴だよね。明晰夢ともいうんだっけ。納得がいったよ!」


(それとなんでおねぇって子どもっぽいのに頭良いの!? おかしいよね? あの頭が良い人はどこか変わっているってこういう事を言うのかな?)


「わたしは全く納得がいかないけどね」




 以上別視点。

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