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魔法少女 3

「ミミちゃん『縮小化』。えっと、こっちに出口ありますよ?」


 インは十メートルあるミミの体を縮小化させて戦闘を終わらせると、アンが倒された余韻より先に、囚われていた人の避難誘導を始める。言語が通じない人には身振り手振りをするか、日本語が分かる人に通訳してもらい何とかした。

 そうして動くのもままならない人を、何とか動ける人やミミに手伝ってもらいつつ、出口まで歩いて脱出する。


 外に出てインが目にしたのは、さらに悲惨な状態となった町。ボロボロだがまだ使用できた建物は、復元すら不可能なほど粉々に。町にいる住民もやはり侵略者側だったのか、魔法少女側のプレイヤーに武器を持って突貫し、混乱を引き起こしている。

 そのはるか上空、ライアが弱まっている気配のしないレーザーを撃つ姿が見える。


「やっほ~インちゃん、遅かったね。もしかしてミイラ取りがミイラになってた? それとも言語が通じなくて困ってた? 意味あるか分からないけど、傷が痛々しく見えるから包帯とか巻こうか?」


 インから見てすぐ近くの瓦礫に乗り、上から見下ろしてくるピジョン。


「ピジョンちゃん……。何が起こってるのこれ?」


 ライアの戦う力が衰えていない。それどころかより強大になっている気すら感じる。それ自体は良い。イン達には弱体化させるつもりはなく、閉じ込められている人が苦しんでいるから助けようとしていただけなのだから。

 あわよくば、侵略者には自主的にこの星から出ていかせようとも考えていた。

 しかしどうだ。町ではまさに、地獄絵巻一節の如き惨状が繰り広げられている。


「何が起こってるんだろうね~? 多分その人たちを開放するだけじゃ、侵略者たちの怒りは収まらなかったのか。元より和解なんて道はなかったのか」


 ピジョンが瓦礫から降り立ちインのそばに寄り添うと、治療キットを取り出して黄色い犬の鞭でやられた箇所へ勝手に適切な処置をしていく。インは一言礼を述べてから前を向く。


「どうしようピジョンちゃん。私は、私はライアの味方になりたい。なりたいけど、侵略者たちの事を知っちゃったから」


「まぁ、今の戦いはお互いの正義感だからね~。っとこれで良し」


 ピジョンは最後に包帯を止めるピンを付けて、言葉を続ける。


「さてインちゃんの悩みだけど、こればかりは自分で決めてほしいなぁ~。友達を思いライアに着くか、侵略者を思い侵略者に着くか」


 そう突き放したところで、ピジョンはそっと微笑を浮かべる。


「侵略者、魔法少女。私は、両方とも救いたい」


 そう決断したインの握りこぶしは、勝手に小さく震えていた。




 いつまでもこのままで変化がない二人。そこに投げ込まれる、「なんで魔法少女を倒そうとしないんですか?」という男性の言葉。

 どうやら苦しくてつらい目にあわされたのに、元凶である魔法少女を倒さないのが、囚われの彼らには非常に不思議のようなのだ。これにインとピジョンは、時間がないためざっくりと説明する。


「なるほど、分かりました。こちらから他の人に掛け合って、この星から撤退します」


 意外な申し出にインは、「えっ?」と聞き返す。


「お二人の言葉通り、私達はあの悪魔に思うところが多々あります。正直、今すぐ仲間に加勢したいほど」


「それで?」


「ですが、私達の人数が多ければ多いほど、あの悪魔の力は上がっていくんですよね?」


 男性は嘲笑を浮かべて続ける。


「私達がいなければ勝手に行倒れてくれるんですよね? これまで私たちをコケにした悪魔にはお似合いの最後じゃないですか」


 悪魔じゃないと、反論の言葉を喉に押し込むイン。彼らから見れば、誰がどのように裏で糸を引いてやったのかはどうでもよく、やられたという結果だけがすべてである。上に騙されてやったなんて言葉は通用しない。インはギュッと拳を握り締める。


「ちょっといいかにゃ~? あっ、インちゃんは絶対に聞いちゃいけないからね~」


「えっ、なんで?」


 ピジョンが笑顔を浮かべて侵略者たちの背中を押してどこかに行こうとするので、いきなりそんなこと言われたインは思わず聞き返す。


「情報屋の仕事。だからぜーったい、ぜーーーったいに聞いちゃいけないからね~。ピジョン(はと)だけに飛んで行っちゃうかもしれないからね~」


「その話ってハトじゃなくてツルだったような? ってピジョンちゃん!」


 インの言葉を無視してピジョンが侵略者を連れ三十分弱ほど。途中途中何か手を合わせるような音や、悲鳴のような声が聞こえ、若干やさぐれたピジョンと困窮した侵略者たちが戻ってくる。


「じゃあよろしくね~」


「本当にできたらの話になりますよ」


「それでいいよ~」


 話が終わり自由となった侵略者たちの行動は迅速だった。

 人から人に伝わり、怪我をしている者から何らかの技術で宇宙船に飛び乗っていく。行動パターンが変わったためか、それを阻止しようとプレイヤー達が襲い掛かり、侵略者側のプレイヤーはそれに応戦する。


「PVP要素はちゃんと存在していたんだけどね~。私達、最後の最後までPVPしてなかったよね~」


「うん」


 装備を奪われた人達のために宇宙船が上陸すれば、我先にと住民が飛び乗り脱出を企てる。NPCのくせに自分の命が大事なのは良くできているなと、ピジョンは心の中で感嘆する。

 一人として逃がす気はないのか、ライアが撃ち落とすかのようにビームを放てば、宇宙船から似たような砲撃が発射され相殺していく。

 住民と侵略者の救出劇は止まらない。いくらライアがとんでもなく強くても、一人しかいないのだから手が足らない。次々とこの星から脱出していけば、その度にライアの力が弱まっていくのかビームの出力が落ちていき、最後には互いの陣営のプレイヤーのみ残る。


「それでさ、インちゃん。どうやってあの魔法少女を救うのかな?」


「……」


「決めてないし、そんな手掛かり無かったもんね」


 侵略者が撤退し、いまだプレイヤーがいるおかげで魔法少女が存命している。どうすれば決着がつくのか分からず、プレイヤーだけが闘い合う場所で、ピジョンとインは瓦礫の上で会話をする。


「あ~あ、インちゃんが魔法少女側を負けに導いたんだよ? それにライアは元々死人、ずっと活動させる方が冒涜的なんだよ~?」


「ライアは、生きてるよ。笑って、はしゃいで、生きてるんだよ」


 涙ぐみそうな声と顔で、一歩だけ踏み出すイン。どれだけ死人と言われようが関係ない。人形だと、悪魔だといわれようが関係ない。友達なのだから。だがそれでも、ライアに相談せず起こした行動であるのも変わりない。


「……インちゃん。こっち見てプリーズ」


「何? ピジョンちゃッ――!」


 ピジョンの元気な声に振り向くと同時に、インの目の前を銀色の軌跡が横切る。ほんの一瞬での出来事。ピジョンにつけてもらった包帯が、役割を失った千切れた羽根のように宙を舞った。


 実はプレイヤーがいないと進まない物語。

 さて、次は八時でしょうかね。

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