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ヒミツ

「ライアのお父さん。そんなにライアが」


「やっぱり理由がありきたりだにゃ~。どこにでもある創作って感じ。でも――」


「さっきの三日間で判明する内容じゃない?」


「普通はね。それこそほぼ不可能なんだよこれ探るの」


 ピジョンはゆさゆさと日記を揺らして語る。

 他のプレイヤーは報酬やら魔法少女やらでPVPに目が行くのだから、こんなストーリーははっきり言っていらない。在ったところで見つからなければ意味がない。

 さらに言えば、これは恐らく魔法少女弱体化フラグの布石なのだろうともピジョンは語る。最初の電流部屋こそが魔法少女の力の源。ならばそこを破壊すれば勝ったも同然だ。


 しかしそうなると、ここは侵略者側プレイヤーの為に存在する場所となる。誰が好き好んで魔法少女の私室に入りこんで弱点探るというのだろうか。仮にインやピジョンのようにいたとしても、弱点を突くようなことはしない。

 そして侵略者側のプレイヤーはどうやって、あの魔法少女の鬼門を破りこんな隠されたところに来れるというのだろうか。魔法少女側のプレイヤーですら、町の規模に驚いている。内通者か運営が関与してなければ難しい。


 ともなればこれは、没データの可能性が出てくる。大規模PVPの為にいろいろ練ったけど、必要ないとすべて削除されるはずだったものではないのか。どうせプレイヤー達はここまで来れるわけがないと高をくくっていた運営のミスなのではないか。

 いやそれも違うはずだ。

 むしろこの情報が無ければ、侵略者側はどうやって『光魔法LV291』を持つ魔法少女を倒せばいいというのだろうか。勝利条件がシビアすぎる。


 運営は何を考えてこんな破滅的なイベントを考えたのか、ピジョンはインに考えている考察を話した。


「ピジョンちゃんでも分からないなら分からないかな」


 そして、「でも気になる事はあるんだよね」と続けた。


「ほうほう、何が気になるのかな?」


「ライアが私に接触してきた理由と、虫食いが起きていた理由」


虫食いの幼虫は暗い場所を好む。では、幼虫を生む明るい場所に飛んでいく習性を持つ、卵を生む成虫はどこに行くのか。

 その答えがこの研究所だったんだなと、インは両腕を組んで頷く。


「にゃはは、虫食いはそこまで関与してないと思うよ?」


「でも気になったから」


 前のめりににグイッとくるイン。ピジョンはなぜだか苦笑している


「これは運営も、下手な描写はできないね~。それでインちゃんに接触してきた理由は確か」


「あの時は私と一緒に町を回りたいからって言ってたような」


「!」


 ある可能性に気づいたピジョンは、探るためにライアの日記を手に取ると、いやなタイミングでそれは動く。


「ンンゥ。さっきから誰? 侵入者か何かでもいるのってイン! ……と誰?」


「よいしょっ」と台座から目を覚まして起き上がる元人類の希望。彼女は可愛らしく小首を傾け、不思議そうにピジョンを見やる。その表情はアリとワームがいるためか、少し驚いているようだ。


「やあやあ、あなたがインちゃんの話していたライアね~。私はピジョン。よろしくね~」


 ピジョンが、何かを含んでいるように見える笑みを浮かべる。


「……うん! うん! よろしくピジョン! わたしの事は、気安くライアって呼んでいいよ!」


 ライアも同じような笑みを浮かべてピジョンに手を差し伸べる。悪意はなく、むしろ人を騙せるようにと教育された賜物なのか。インから見ると、不法侵入者なのに歓迎されているように感じてしまう握手の求めだった。


「ふ~ん、随分と軽率なんだね」


「そうかな? インの友達なら、信用できると思うよ!」


 ピジョンは握手に応じず、腰に付けている武器に手を付ける。挨拶のはずなのになんで武器を取り出す必要があるのか。なんでそんなよく分からない気を放つ必要があるのだろうか。彼女をすぐにでも止められるように、インは慌ててミミとアンを手繰り寄せて準備を行う。


「って、侵略者来てる!? 早く行かないと! っとその前に、それ、読んだ?」


 慌てて腕を動かし走ろうとしたライアから、今まででは想像できないほどの威圧感が流れてくる。たった一言発しただけとは思えないほどに。

 元気で天真爛漫の言葉が当てはまるライアを見てきたからこそ、今のライアはまるで別人だ。インは体が恐怖で縛り付けられる感覚を得る。その間、アンとミミにも同じ現象が起こっているのか、一歩として動こうとしない。

 そんな中で、ピジョンだけが首を横に振っている。


「んーにゃ。見てないよ」


「ふーん。本当のようだね! まったく、レディーの部屋に入って勝手に日記を盗み見るのはどうかと思うよイン! 私の日記は没収ぅ! 待ってて、ちょっと行ってくるから!」


 何かが起こっているのを本当に感覚だけで判断できるのか。ライアはピジョンの隣を駆け抜ける。数瞬遅れてやってくるのは、強引な風と破裂するかのような音。気づいた時には、ライアは手品のように目の前から消えている。ようやく動けるようになったインは、三度瞬きを繰り返し、唖然としたままライアの走り抜けた道を見る。

 ライアの初速の動作に、目が追い付かなかったのもある。それと同じくして、「無理だったか~」とぼやいているピジョン。インがそっちに目を向ければ、手からライアの日記が消えている。

 あり得るだろうか。盗みと移動を同時に行うなんて。これこそまさに、瞬間移動という奴だろう。


「ピジョンちゃん。なんでライアに武器を構えようとしてたの?」


 疑問半分、友達に刃物を向けた不満半分、インは早速ピジョンに駆け付け尋ねてみる。


「うんにゃ。何でもないよインちゃん。戻って彼らを救って来ようよ」


 武器から手を放すと、本当に興味が失せたとばかりに踵を反してその場から立ち去ろうとするピジョン。


「でもそれだと、ライアが」


「消えるね。あの装置を破壊すれば、あの子は消える」


 最初は破壊する気でいた。そこに苦しんでいる人がいて、ただの補給の道具とされているなら助けたいとインは考えた。

 だがその結果がライアを消す事となる。

 ピジョンも正面から、オブラートに包むことせず言い切ってくる。


「でも、あの人たちは解放しないと――」


「ずっとあのままだね。その前に……、やっぱ何でもないにゃ。行こっ、インちゃん」


「えっ待って」


 ピジョンはライアの日記を無視して今まで来た道へと戻っていくと、それに慌ててインと虫たちはついていくのだった。

 サブタイトルが意味をなしていない。

 次は十二時です。

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