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日記2

「こういうオチはよく使われるよねぇ~」


「ピジョンちゃん。どういう事?」


「ンンゥ~、あの魔法少女が言ってたんだよね?」


 服の色が被っているのは、インちゃんが来ると分からなかったから。

  分からなかったからこそ、自分の服の一着をプレゼントした。それに麻痺や毒やらがついてくるということは、魔法少女にも同じ効果は現れている。

 なのに効かないとなれば、アビリティ効果で耐性があるのか。それとも元々効かない体質なのか。


 ピジョンは淡々と語ってから辺りを見渡すと、等身大のカプセルを見てそっと触れる。


「ここだろうね~。あの魔法少女が生まれたのは。後は――」


 続いてピジョンは机の上に無造作に置かれている、侵略者についてと書かれた書類を手に取りしゃがんで開く。インは横からのぞき込んでみる。

 そこには、ある日オネストの父親が天を見上げていると、宇宙船が降り立ち町の住民を倒していった事について綴られていた。



 侵略者の力は強大すぎた。自分たちには原理が分からない未知の力を振るうせいで、どれだけの兵器を投入しようとも撤退を余儀なくされる。


 そこで世界の情勢が犯罪者やホームレスなどの人から力を吸い、一人に注ぐことで力を蓄え侵略者に対抗すると決めた。幸いその技術は、今までのこの星で集めることができた全兵力を持ち得て撃墜に成功した、宇宙船から解析して手に入れた。それこそが、この星の最後の希望であった。


 その効果はてきめん。生身の人間ひとりの魔法で侵略者を押し返し、初めて撃退するという快挙を遂げた。今日この日が、記念すべき侵略者撃退した英雄の、誕生の日となった。


 だがこの方法にはとんでもない副作用があった。百人の力をたった一人に注ぎ込むのだから、その反動で戦うたびに体がきしむような、自分の体ではない感覚に陥ってしまうと英雄が話したのだ。


 その動力ともなる力を吸い取られていた百人も、次第に衰弱死してしまうケースが発生した。それでも一億人以上を守る為には、百人以上の犠牲ですむ。必ず侵略者を撃退できるのだから、人々はこの技術を手放そうとは考えなかった。


「魔法少女服で発生する効果とか反動とか裏設定細かく作りすぎでしょ」


「分からないけど、ゲームってそこまで細かく作らないの?」


「だいたいね。MMOって最初のイベントやネタが切れたらとりあえずPVPするから」


 何せ今回は五回目のイベントなのだから。そう答えたピジョンは次に、ライアの秘密を手に取って読んでみる。

 そこにはライアが副作用に対応できるように設計された、ホムンクルスに近い存在である事。魔法少女はAIではなく、緊急時でも迷いなく活動できるように適性が高いと判断された女の子を選出する事。力の吸収については魔法少女の精神が病む恐れがある為、頭を弄って認識できなくした事などがご丁寧に解説込みで書かれていた。


「……残酷だねぇ~。いくらゲームと知ってても」


「ライアがそんな風になっていたなんて」


 友達と言われたのに気づけなかったと、インは歯を噛み締め絶句する。


「いやいや、二日間ちょっとで気づける方が怖いと思うなぁ~私」


 涙ぐんだ声で友達失格だと漏らすインに、ピジョンがツッコミを入れる。


「絶対に侵略者達に勝つ。勝つんだ! ……でも何で、侵略者が攻めてくるようになったんだろ」


「そこは大方、領土を広げたいとかでしょ」


 戦いの理由は、歴史を見ると意外とくだらない物が多い。大抵あそこがむかつく、気に入らない、領土を増やしたいから戦争するものだ。

 これはピジョンやインにも当てはまる。戦いたい、かっこいい武器がほしい、楽しい、面白いと感じる。だから戦う。

 ゲームというものは、そういう欲を発散できる場所なのだ。


 口は軽く、表情は沈痛さを残すもののピジョンは、瞳を輝かせて今度は父親の日記を手に取り開く。


 〇月×日


 オネストが……。首に…………。

 神様はなんでこんな酷い事を……。



 〇月×日


 私は何のために生きていたのか。愛する彼女は……。

 最後に残ったのは冷たく無機質な家のみ。ただいまとドアを開けても帰ってくるのは暗闇で……。今でも目を閉じれば、あの頃が鮮明に浮かぶ。



 しばらくオネストが亡くなった悲しみが続いており、ピジョンがインに断りを入れてくる。これをいいよとインは許可して、変化があるまで進む。



 〇月×日


 あの侵略者が攻めてきてから約半年ほどが過ぎ去った。

 私は今でもあの子が忘れられず、保存が効くカプセルに入れている。話しかければ、あの子が答えを返してくれている気がして、何度も話しかけた。

 幻聴だと分かっていても、止める事は出来なかった。



 ここから少し空白が続く。



 〇月×日


 ラジオで政府が、国民が誰でも救世主になれると発表していた。侵略者と対峙できる戦闘人形を作りたいらしい。でも国民たちの誰も候補しない。当然だ。自分を犠牲にして誰かを守るために戦い続けるなんて、やりたくないに決まっている。私だってそれは同じだ。でももし、それがもし、死んでしまった者でもできるのであれば……。私は再び、オネストに会えるだろうか。



 〇月×日


 オネストが帰ってきた!

 娘が私に、屈託のない笑顔を向けてくる。かつてと変わらぬ声で、私をパパだと呼んでくれる。こんな幸せなことがあっていいのか! ああ神様、もう私は死んでもいいくらいです。

 この日私は、彼女の名前を改名した。正直だったからこそ、人を良く信じる良い子になったからこそ、つけこまれ、騙され、この世からいなくなってしまった愛しき娘。だから今度は、何事にも疑うように教育しよう。隙があるのなら、相手を騙すほどの知能を身に着けるように教育しなおそう。それが人類の、いや、もう二度と家族を失いたくない私の為なのだ。自分勝手な、ダメな親でごめん。……ライア。



 〇月×日


 政府の研究機関はライアに隠し、私にだけ話してきた。

 ライアは人から吸収した力で動く事を可能としているらしい。死んだせいで脳が生きていなかった事、反動に耐えるために体がホムンクルスである事、二つの要因が重なってしまったが故なんだと。

 侵略者は撃退される頻度が高くなってきたのか、最近だとめっきり姿を現さなくなってしまった。もう力を吸収され続けている彼らも、楽にしてあげたいと政府は言ってきている。

 私は……私の前から……オネス、再びライアが……いなくなってしまうんじゃないのか。



 〇月×日


 私はあれから、ライアに嘘をついたり、相手を騙すよう教育している。

 しかしライアは……正直で、まっすぐな子に育ってしまった。もうダメなのだろう。ライアは、心の底から良い子なのだろう。魂に、オネストが刻まれているのだろう。



 〇月×日


 あれから、侵略者は攻めてこなくなった。このままではまたライアと! 何とかするすべはないのか。



 〇月×日


 そうだ。侵略者が攻めてくるように仕向ければいいんだ。彼らをこの地に誘拐し、繋ぎ留めてしまおう。力の供給源も彼らから吸い取ろう。そうすれば私は、死ぬまでライアと一緒にいられる。いや、死んでからもライアが孤独にならないように自立型の人形を作ろう。もう二度と、大事な娘を悲しませないように。



 〇月×日


 ライア。私は君に嘘をついた。侵略者を倒すための魔法、住民を救う魔法。あれは、救いでも何でもない。力の供給源に侵略者を送り込むものだ。この星の大半の住民たちはもう、私達が守るべき人間たちじゃない。この星のみんなはライアを、侵略者を捕縛し救済と言い張る狂った人形だと恐れ、星から出て行ってしまった。もう私も長くはない。すまなかった、ライア。本当に狂っていたのは、私だったというのに。



 次のページ、次のページと読み進め終えてピジョンは日記を閉じた。

 次は八時です。

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