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VS再戦 グラスウルフ

 

「よし、今度は勝ちに行くぞぉ!」


 インがえいえいおー! と片手を突き上げると、合わせるようにアンとミミも飛び跳ねる。

 今回は魔物のえさを調合するためにウルフ肉を取りに来た時と違う。本気でグラスウルフを倒すために来たのだ。

 それというのも、ファイの話ではイベントがそろそろ始まるから備えておいた方が良いと夕飯を食べているときに教えてもらっていたからだ。

 現状インとアンはあまりにも力不足。ミミに至って元のステータスが高いとはいえ低LV。こんなのでイベントを生き残れそうにない。だからこそ、明日のイベントに備えてLVを大幅に上げるためにやって来たのだ。


 イン達は香る薬草に目もくれず草原を進んでいき広場に出れば、あの時と同じ遠吠えが聞こえ五メートルはある狼が姿を現す。

 前はグラスウルフを見てVRの迫力に驚いたインとアンだが、今回は違う。事前にどのような姿なのか分かっていたのと、グラスウルフの二倍以上のミミを見ていたせいか耐性はもう十分ついていた。


「ミミちゃん。『巨大化』」


 ミミの体が大きくなっていき、全長十三メートルの元の圧倒的な存在へと生まれ変われば、グラスウルフの方が一歩後ずさる。

 今までグラスウルフは自分が強者であるのを疑わなかった。草原にいるものすべてが等しく矮小で、取るに足らない存在だった。

 それがどうだ。今は逆に天から見下ろされているのではないか。

 グラスウルフの喉から情けない犬の声が出そうになるも、群れの長であるプライドからか喉に押し込める。

 しかし大きい存在は時に、小さな存在を隠してしまう。真に危険な者を見えなくしてしまう。そんなグラスウルフの死神となる二つの影が、天から見上げてくるワームの上から飛び降りた。


「よっと」


 インとアンだ。

 前来た時にグラスウルフの行動を知っていたインは、事前にアンを連れてミミの上に座っていた。確実に上を取れるように最初ミミを巨大化させて、思考停止させてやろうと作戦立てしていたのだ。

 しかし流石はウルフのボス。すぐに意識を取り戻すと、身軽に飛びのいてインが弱点の頭に降ってくるのを防ぐ。

 だがそうしてくるのは、インだって百も承知。腕に抱いているアンを頭まで持ち上げ、


「行って、アンちゃん! お願いミミちゃん!」


 投げ飛ばした。

 重力に逆らわず下に向かって落ちていくインを、ミミが触手でつかみ取るとゆっくりと地面に下ろしていく。

 肝心のアンは前と同じ戦法をやると事前に知らされており、心で覚悟していたのかインから見て凛々しい表情でグラスウルフの顔面に張り付いた。

 顔面に張り付く白いアリ。気持ち悪そうにグラスウルフが顔を振り、振り払うよりも速くアンは足を持ち上げる。流石は二度目。慣れた走りを見せて、素早く頭に到達し噛みつきまくる。


 こうなればボスとして腹を見せて頭を地面に擦り付けるのも、頭を掻くことも、振り払う事もグラスウルフには不可能。どれだけ抵抗しようが、アンの足はがっちりとグラスウルフの皮膚を掴んでいる。

 常にやってくる針で刺すようなツンとした頭痛に耐え続けていると、やがてHPは半分を切った。


 ここで、突然操り人形になったかのように、グラスウルフの行動が変わる。


「ワオオオオォォォォン!!」


 怒りを秘めた遠吠えを太陽に届けさせると、ボスの命令にぞろぞろと広場に足を踏み入れるウルフたち。その存在と数は、ゲームを始めたてのプレイヤーからすれば、厄介な物だろう。

 そんな彼らがまず目にしたのは巨大なワーム。一口で丸のみにできる存在に、恐怖で怯えているのか後ずさる。

 その姿にボスはもう一度天高く、気高く吠えた。すると他のウルフたちも、勇敢を見せつけるかのように吠え闘魂を注入すれば波紋のように広がっていく。

 彼らは今一番にヘイトを溜めてターゲットを集めているアンを倒そうと、一斉にボスのグラスウルフによじ登る。いや、よじ登ろうとした。

 

「ワオオオオオォォォォォォンンン!!!」


 その行為は、返ってグラスウルフの足を爪で傷つけてしまう。なんせウルフ達の爪は立派に武器として扱えるほど伸びている。そんな爪でアリと同じように足をかければ、どうなるかは火を見るより明らかだろう。

 無能な部下にキレたのか、それとも単純に頭の痛み暴れているのか、グラスウルフはその場で爪を、牙を振り上げ、次々と部下のウルフを片っ端から倒していく。


「壮絶だね。ミミちゃん」


 ミミの下で、のんきにグラスウルフの群れの自滅を見ているイン。彼女は役割を終えると、インベントリから水の入った瓶を取り出し、ミミの乾燥肌対策にかけまくる。

 リアルでミミズは皮膚呼吸であるので、これも自殺行為に入りそうだがここはゲーム。ばっちりと効いているおかげか、太陽からのダメージが減少する。


 そこからアンのハメ技でグラスウルフのHPが25%を下回った時、それはいきなり起こった。

 グラスウルフは文字通り血迷ったのか、アンではなくウルフを対象に狩り始めたではないか。

 飛び散るHPバー。ウルフ達はボスの乱心に、我先にとプライドを捨てて逃げ出そうとするも、すぐに追いつかれて餌食となる。もうかのボスには、部下の姿なんて見えていないようだった。


 インが事前にハルトやファイから仕入れた情報では、HP五十%以下のギミックはウルフの無限湧きしかなく、それ以外は何も起こらないはずだった。最初なんだから簡単なんだと、低LVでも余裕で倒せると皆口をそろえていた。

 それがどうだろうか。無限わきするはずのウルフが姿を現さなくなっていった。


 それと同時に、グラスウルフの爽やかな草原のような緑の毛皮が、まるでウルフの返り血を浴びたかのように顔から尻尾へと、風が流れるかのように赤く染め上がる。天に向かっての遠吠えは、自らの手で群れを全滅させてしまった悲しみからか、どこか泣き声のようにもイン達は感じるだろう。


 インは分かっていた。これがボスの進化であることを。そして知らなかった。この現象に遭遇するのが、どれほど幸運な物なのかを。


 自ら群れを全滅させてLVを上げ進化したグラスウルフ改め、グリージーウルフは、狂乱と悲痛を表すかのように目を真朱へと染め、一人のエルフと二匹の虫の前に立ちふさがった。

 幸運とか、物は言いよう。カラスのフンが当たるのを不幸とする者がいれば、逆に良く当てられたな、ラッキーじゃんと捉える者もいる。身近なものだと、おみくじとかでしょうか。凶とか大凶ほど、出にくい物はないのです。


 次はまさかの十二時です。

 今回も虫がメインで出てくる作品をお読みいただきありがとうございました。是非とも他のなろう小説で、癒されていってください。


 次いでですが、気づいたらPVが一万到達していました。しかしながら、なろう初心者にはこれが高いのか低いのか。そもそもPVとは何なのか。いちいち調べないと書けない馬鹿丸出し申し訳ありません。

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