インの料理センス 3
「また失敗!」
部屋中黒い煙だらけにしながら、インは悄然として座る。
もう何度も失敗が続いている。そのたびにマーロンは、消臭剤のような魔道具を取り出し、臭いをかき消しカウンターから微笑んでいる。その心境はもう、料理下手でも必死に努力して美味しい物を作ろうとする娘を見守る、母親に近いものとなっていた。
あれから魔物のえさは二つしか完成していない。いや、二つも完成している。とはいえ、徐々に料理という名の調合が上手くなっているのは、確かであった。
種族 エルフ
名前:イン LV13
HP115/115 MP89/189ー100
筋力1
防御1
速度3
魔力3
運30
アビリティ 『調教LV11』『調合LV15』『自由枠』『指示LV4』『料理LV6』『採取LV4』
SP1
インは調合で料理に近い行動をとった事で、料理アビリティを手に入れている。とはいえこれは裏ルートの取り方。通常ルートでは料理キットで料理をすれば手に入るものとなっている。
しかしどう取ろうが関係ないのだろう。あったとしても元の料理が壊滅的ではアビリティがあったとしても生かしきれぬものだ。
(でもまだ次が。……あっ)
インはインベントリを開き、次のウルフ肉を取ろうと腕を伸ばして気がつく。もうウルフの肉が無くなっているのを。集中しすぎて残り在庫を忘れていたようだ。
(結局できたのは三つ。いけるかなぁ?)
インがアンをテイムする際使用した魔物のえさの数は五つ。それが三つしかない。できれば後、もう三つほど欲しくなる。
「マーロンさん。イベントっていつぐらいでしたっけ?」
虫をテイムしに行くのもいいが、イベントの事もある。このまま出撃するのもいいのだが、相棒の最大HPは1しかない。だれが戦場に、意識が朦朧としている重症者一人を連れて向かおうとするのだろうか。
いくらアンを信じていたとしても、一撃も食らわないで立ちまわせるなんて事、インにはできない。
「五日後ね。私とインちゃんだとLV差があるから別々になるわね」
マーロンはゲームの広告通知を開き確認する。
「そうですか。ありがとうございます!」
インは教えてくれた情報にお礼を言うと、マーロンは「これくらいはいいのよ」とニッコリ手を振って返す。五日後となれば今からウルフの肉を取りに行き、また完成するのかすら危うい。魔物のえさ作るのでは遅くなる。
(やっぱり新しく虫ちゃんを仲間にする必要があるよね。LV上げの件もあるし)
現状でうまく戦えるようにするには新しく虫を仲間にするしかない。インはそう心に決めると、調合キットをインベントリに仕舞い込む。
「それじゃあマーロンさん! 私、新しい虫ちゃんをテイムしに行ってきます! 場所を貸してくれてありがとうございました」
立ち上がってマーロンに頭を下げてお礼を言うイン。新たな虫をテイムしに行くと聞き、アンはインの足に近づき抱き上げてもらう。
「別にいいのよ。場所を貸すくらい。でもこの辺で虫といえば、南の森かしら。あそこにはムカデやらクモやら。ああ無理。もう想像したくないわ」
「何それパラダイスじゃないですか!?」
どうやらこのエルミナの南に行った森の中では、ムカデやらクモが出るらしい。それを聞いたインの瞳がハートマークを描いているのに気付いたマーロンは、「もう真正ね」と小さく呟く。
あれだけの事をしでかしてきたのだ。彼女の中でのインは、可愛らしい女の子から虫好きの可愛らしい変人と認識が改められているようだ。
「でも多分LVは足りないわよ」
マーロンはさらに、森の適性LVは10であると続ける。そんなところにいくら適性LVに到達していても、全部運に振っているインには難しいと判断していた。
しかしインが向かおうとしていた場所は違う。
「大丈夫です。行くのは高原ですので。では、行ってきます!」
「ほっとするようなほっとしないような。行ってらっしゃいインちゃん」
森に行かないのであれば、クモもムカデもテイムすることはない。さらに言えば、あるクエストを受けること以外は、そことさらにLVの高い場所でしかクモもムカデも出てこない。
だからこそ、マーロンはほっとしたと口にした。
実際は、もっとおぞましい存在をテイムしようとしているのだが。
ともあれインは、新たな虫をテイムしに高原へと向かっていった。
短すぎるので、今回はもう一本投稿します。
実はある場所が伏線としてもう出ていたり……。これでテイムする虫が分かる人は相当すごいですね。




