勘違いはどっち?
俺は我慢ならずにその男を怒鳴りつけた。
「おい、今、ポイ捨てしたタバコを拾え!」
男はうざったそうに振り向くとこう答える。
「こうやって捨てれば、清掃作業をする人の仕事が増えるだろう?
雇用機会を増やしてやってるんだよ、感謝して欲しいくらいだ」
悪びれもせずに言うその姿に俺は呆気に取られた。
だがそれを聞いてある考えが浮かんだ俺は、
持っていた鞄で男を目一杯殴り始めた。
「わっ、何すんだ!怪我するだろう!」
男のその叫びに俺はすかさずこう答えた。
「そうさ、怪我をすれば病院のお世話になるだろう。
そうすればお前さんの言う通り雇用が増やせる、
『医師や看護師』の雇用をな」
そう言うと俺は、再び鞄で殴りつけようとする。
男はみるみる真っ青となり今度はこう叫んだ。
「おい、やめろ!警察を呼ぶぞ!」
「なるほど、それもいい。
そうすればさらに雇用を増やすことができる、
『警察官』の雇用をな、よかったよかった……」