後手
読んで頂いて居る片方ありがとう御座います。
私は、四角い革から厚紙を取りだし眺めて見たが、何かさっぱり解らず、
「おぃ!誰か鑑定持ちは居るか!?」
周囲に確認したが、鑑定魔法を使える奴はいなかった。諦めかけていた時、土煙を上げて向かってくる一団を目にしながら、
「やっとのご登場か‥」「全員整列!」
皮肉混じりの思いで、号令をかけ一団を出迎えた。
四方を騎馬に護衛され、中央に二体の馬に乗った人物。
到着し馬から降りた者こそ、古文書の記述を見付け、王に頼み込み我らをこの地に派遣した、じゃじゃ馬娘こと、第三王女エライヤ姫。
「バール隊長!どうだ!救世主様は居たか?!」
何も起こらず誰も現れ無かった旨を伝え、その代わりに黒革の四角い物を差し出した。
「どれ、貸して御覧」
と手を前にした、もう一体の馬から降りた人物、宮廷専属魔導士ジャーナ
。黒革を受けとると、
「我に真実を見せ秘密を語れ‥‥フム‥フム」
ジャーナ様が言うには、黒革は名刺入れで、中の厚紙は名刺と言うらしい。紙の文字を訪ねると、
「フム、小さな文字は解らぬが、大きい文字の最後だけじゃな、ん~武‥タケル‥じゃな」
タケルタケルタケルタ‥ケルタ‥
私の中で何かが合致した!
「後手ゴテゴテの後手だ!」「全員騎上!」
直ぐ様命令をだし、姫には一度戻って我々からの連絡を待つ事を伝え、その場を後にした。
すでに丸一日無断にした!
「誰か!近くの町か村を知ってるか!」
馬で駆けながら部活に聞くと、宿場町があるとの事。
「全員!そこに向かうぞ!」
やられた!失敗だ‥あの青年が救世主様だったとは‥しかし、贔目に見ても子汚い顔や服装‥見た目に騙された‥そうなるとスクロール鑑定も疑わし‥
自分を戒め反省しながら街道を駆けていると、道の横に巨大な彫刻が現れた。馬を止め間近に目にすると《氷》の像。棍棒を手にしたサイクロップスだと分かった。
「見事だ‥!」
丁度その時、荷馬車を引いた商人親子の一団が声を掛けてきた。
「凄いでしょう、それ!来る時それに襲われて、通りすがりの方に助けてもらい、一瞬で、それです。」
詳しく話しを聞いたところ、猫族の娘がヤッタらしいが違う。その後ろのひ弱な男の仕業だ。
魔導士のジャーナ様ならいざ知らず、娘が‥絶対違う。
彼等の行き先を訪ねると、一緒に宿場町まで行ったとのこと。私は馬に跨がり部下達と宿場町を目指した。
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その日の夕刻、宿場町モホトの酒場で、
「しっかし、人間が造る酒は旨い!」
と酒を煽る女がいた。丁度その時、黒付く目の男が店に入って来るのを見つけ、
「おっ!ケルべじゃねぇ~かっ!」
「‥元気そうだな‥メデュー‥」
どうやら二人は知り合いらしく、メデューと呼ぶ女の席にケルべは小さく‥‥座った‥‥
生暖かい目で宜しくお願いします。