少年は相談する(1)
ある日、魔術師である少年ロムは奇妙な夢を見た。下級魔物のスライムと戦っている夢であった。それは魔術師であるロムが見てもおかしくはない夢だが普段のロムとは違うところがあった。それは、剣で戦っていたのである。普段ならば杖を持ちモンスターに気付かれない所から魔法を使い倒すのだ。だからロムは違和感を覚えた。そのタイミングでロムは目を覚ました。
「なんだったんだ、今の夢は」
ロムは少し疑問に思った。だが、ロムはただの夢だろうと思い、気にしていなかった。ところが、しばらくするとまた同じような夢を見た。
その夢では今度は魔獣化した熊から荷物を積んだ馬車を助けていた。その2回目の夢を皮切りに毎日のようにロムは自分が剣で戦う夢をみるようになった。
ロムはその奇妙な夢についてを幼馴染みで親友の回復魔術師のリックに相談してみることにした。そうしてリックに相談するためにリックが営んでいる高位魔術師だけが入ることが許されている医療所に来た。
「リック、ちょっと聞いて貰いたいことがあるんだが」
医療所の扉を叩きながらリックに呼びかけてみるが返事が帰ってこない。ロムは内心またか、と思いながら一応、声を掛ける。
「入るぞ、文句があっても返事しなかったお前が悪いからな」
そう言いながら扉を開けると、物が散らかった部屋が広がる。机の上にはフラスコや試験管な入った液体、少し奥を覗いてみると、いつものようにベットの上の布団にくるまっているリックを見つける。
「リック、起きろ朝だぞ」
「んん......」
まだ、起きたくないようでいやいやと身もだえする。仕方ないので少し弱めの雷の魔法を使うことにする。少しづつ手のひらに魔力を集中させ、頭の中で静電気をイメージする。バチバチと音がし始めたタイミングで集めた魔力をリックに向けて放つ。魔法が当たった瞬間にリックが少し声をあげるが気にしない。
「ロム~、いつも起こすなら優しくって言ってるでしょー」
目を擦りながら起き上がり、不満に満ちた言葉を俺に言ってくる。
「声を掛けても起きないお前が悪い」
と俺の不満もリックにぶつける。だが、ここまでは殆んどいつも通りのことだ。しかし今日は違うところがあった。
「お前、何で下着で寝てんだよ!?」
俺は動揺してしまう。その理由は単純で、リックは女なのである。顔は中性的で普段着も男っぽい服を着ているため、男と間違われることも多々ある。極めつけはその名前である、リックの家は貴族の高い位なのだそうで、リックが長女で一人娘なために男として育てられたのだ。
だが、当の本人であるリックは「貴族は僕には性に合わない」と言って家をとびたして王都郊外に今の医療所を営んでいる。
リックが女であることは俺も最近まで知らなかったのだが突然リックが教えてきた。理由は分からないがまぁ、そんなことより今は目の前の状況を処理しなければならない。
「だって、仕事の後にお風呂に入って~めんどくさくなって下着着けてればいっかて思ったんだもん」
「だもん、じゃねぇよ、服ぐらいちゃんと着ろよ!!」
「えへへ~、次から気を付けるよ~」
何が嬉しいのか分からないがすごい良い笑顔で返事をされる。
「何でお前はそんなに子供っぽいんだよ」
「そんなのは、僕に言わないでよ~。じゃあ逆に聞くけどロムは何でそんなに大人っぽいのさ」
「知るか!というかお前はさっさと服を着ろォォォォォ!!!!!」