土橋真二郎「殺戮ゲームの館」
土橋真二郎「殺戮ゲームの館」
最初は興味本位だった。
オカルトサークルに所属する十一名は、集団自殺に使われたという廃墟に興味を示し、そこに辿り着く。
だが、気が付けば、彼らは密室の中に閉じ込められていた。
そこで待ち受けていたのは、一方的に提示される不可解な〈ルール〉
それに従わなければ、そして従っても毎晩一人ずつ殺されていく悪夢。
この中に一人、殺人犯がいる。それに気づいた彼らは、疑心と狂気の渦に呑みこまれていく――。
人狼ゲームを題材にした、密室サスペンス。
人狼ゲーム。それは、一種の犯人当てクイズである。
ちなみに、正式名称は「「Are You a Werewolf?」、日本語訳で「汝は人狼なりや?」とされる。
ヨーロッパで遊戯されていた伝統的なゲームを題材にし、ソビエト連邦のモスクア大学で作られたゲーム「Mafia」がヨーロッパで流行。20世紀、欧州でさまざまなローカルルールを交えて普及する。それが21世紀のインターネットの普及に従い、世界中に発信された。(日本でいうところの大富豪のような普及の仕方である)
アメリカのゲームメーカーLooney Labs.が発売したものが国際的に普及。日本では派生したものの一つ「タブラの狼」が主に普及しているが、他にも「ミラーホロウの人狼」「究極の人狼」などローカルルールを取り入れ、尚且つ、研究、精錬されたものが巷では普及している。
閑話休題。
人狼ゲームは21世紀初頭、インターネットの普及に際して、日本でも広く普及し、小説やマンガでも取り上げられているが、この小説はそれを題材にしたものと言える。
ルールは単純なものを使用し、誰もが理解しやすい。だが、その分、狂気や疑心、混乱は凄まじい。
登場人物が抱く心理の描写は、その事態に心から焦り、惑い、苦しんでいるのが伝わってくる、まさに圧倒的な表現能力だ。土橋真二郎氏のデビュー作「扉の外」でも感じられる、描写能力だ。
読んでいくうちに、まるで文字の密室に囚われている気分にさえなってくる。
この作品はそれを通しながら、友人たちの絆も試されていく。彼らのエピソードや、性格、心の在り方――小出しにしながら、徐々に読者たちは彼らに惹かれていく。
分かりやすいシステムで、ここまで書くか、と一歩下がって見てみればそういう評価もできるだろう。
土橋真二郎氏の描く世界は、圧巻。それの一端を知ることのできる作品だ。
人狼ゲームや心理描写を好む作者、読者の方々は是非読むべき作品である。