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徒然百讀録  作者: アレセイア
紹介
6/14

山田風太郎「甲賀忍法帖」

 甲賀忍法帖、と聞くとあまり知られていないような気がするが、一部の人にはこう言えば伝わるだろう。


 バジリスク、と。


 甲賀忍者と、伊賀忍者。源平の昔より戦い続けていた両者は憎しみ合い、相容れない存在であった。それの戦いを防いでいたのは、服部家。不戦の約定により、両者は矛を収めていた。

 その中、甲賀忍者首領である甲賀弾正の孫、甲賀弦之介と、伊賀忍者頭目お幻の孫娘、朧は恋仲にあった。時節が時節であれば、二人は結ばれ、両家の確執は解けるかと思えた。

 その事情を知ってか知らずか、時の権力者、徳川家康は自身の後継者を選ぶべく、甲賀と伊賀の忍者を戦い合わせ、その勝敗で決しようとしたのだ。

 服部半蔵の命により、不戦の約定を解かれた両家の、十人の選抜された忍たちは己の忍術のすべてを賭けて、仇敵を討ち果たさんと暗躍する。それに名を連ねた、弦之介と、朧もまた――。


 山田風太郎描く、忍者群像劇。忍法帖シリーズの、第一弾だ。


 1958~1959年に書かれた作品であるが、これが後世に残した影響力は凄まじい。

 まず、この小説は十対十のチーム対戦である。これは非常に良い数字であり、個人の特技を活かしながら、コンビを組むことで互いの効果を相乗し合うなど、団体戦の醍醐味も出すことができる。

 また、一人、一人と倒され、徐々に数が減りゆく中で、どちらが勝つのかという期待感を煽れる。

 小説家の夢枕獏も「ストーリー上にチーム対決の要素を盛り込んだのは山田風太郎が初めてであり、山田風太郎という作家が漫画界に与えた影響は計り知れない」と評し、漫画におけるNARUTOの写輪眼もまた、この作品の瞳術を参考にしたと考えられる。

 そして、キャラクターの特技、個性が巧みに書かれている。しかも、十人×二家+家康などのキャラクターも忍法勝負に対する考えや葛藤が描かれる。時節や事情を踏まえた心情に、時の権力者の困惑や葛藤の一面を感じさせられたり、また恋仲である家と敵対する二人の忍の決意なども垣間見える。

 この忍者たちが持つ忍術だが、詳細に書き記され、端的に記されると超能力バトルなのだが、科学的な見地も交えることでそれを『忍術』として確立させている。

 つまり、この作品中にはさまざまな要素が詰め込まれている。これを原作に作られた『バジリスク』は大人気を博し、またスロット業界でも魅力的な機械割と共に、その十対十の対戦形式で行われるゲーム性(大当たり中に行われるバトルに、甲賀が勝利すれば次回大当たり確約)で魅力を集めている。


 小説の創作者のみならず、全てのクリエイターは知らなければならない作品の一つと言えよう。

 

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