第三種接近遭遇
真夏の公園の木陰の下のベンチに座り、スマホをイジり友人達を待っていたところ、唐突に隣から高校生くらいの見知らぬ少女に声を掛けられる。
ついさっきまで隣には誰も座っていなかったのに、いつのまに?それに親しげに僕をセンパイと呼び、なにやら話しかけてくるこの少女はどちら様だ?
そうこうしているうちに友人達がやってきた。
彼らもまた怪訝そうな顔をするのかと思いきや、なんだか全く気にしていない様子。
それどころか、とても親しげだ。
なんだ、彼らの知り合いか。
その後まるまる一日、彼女は僕達について歩いた。
そして日が暮れて、友人達と別れたが、なぜか少女は僕のうちまでついて来た。
家に帰らなくてもいいのかと問えば、お家に帰らなくていいの?と問い返してくる。
君の家はどこかと問えば、センパイのお家はどこ?と返してくる。
いろいろ質問してみたら、どれもこれもおうむ返しに返してくる。
そのくせ僕がなにも言わないと、勝手におしゃべりしている始末。
僕は家の前で途方に暮れてしまった。
仕方なくスマホで友人達に事の次第を説明してみたら、そもそもその女の子ってダレ?
昼間一緒にいた女の子だよ、親しげに話してたじゃないか。
ところが、そんな子は知らないとみんな言う。からかわれているのかとも思ったが、どうやら本気で分からないらしい。
僕はますます途方に暮れた。
本当にこの女の子は誰だ。今もなにやら1人で勝手に話し続けている。なんだか恐ろしくなって来た。
ふと思いついたことがある。
試しにやってみた。
僕はダレ?
私はワタシ?
僕はどこから来たの?
私はソラから来たの?
僕の家はどこ?
私の家はここ?
僕はどこに帰るの?
私はソラに帰るの?
僕は何?
私はナニ?
ダメだ、さっぱり分からない。
センパイ、センパイ。
彼女は親しげに話し続ける。
センパイ、あのね…
翌日、大学に行った。
当然のように隣には例の少女がいる。
そして友人達は親しげに話していた。
昨日のメールでは確かに知らないと言っていたのに。
直接聞いてみた。
この子ダレ?
友人達は逆に聞いてきた。
君はダレ?
はてさて、僕は誰だろう。
試しにメールで聞いてみた。
この子ダレ?
友人達からの返信。
ダレって誰が?
この女の子。
どの女の子だよ。というか直接話せよ。
この間、目の前にいる友人達は一度もスマホをいじっていない。さっきから、例の女の子と親しげに話している。
なんだって?
僕はいよいよ訳が分からなくなった。一体僕はどうかしてしまったんだろうか。
いや、そもそもココハドコ?