表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来夏の青空  作者: 相原紗侑
第一章〜始まり〜
1/11

1st start

1、夏休み


私、蒼空そうく 来夏らいかの夏休みはもう終わろうとしていた。


中学校最後の夏休みはあと数時間で終わる。


あぁ、終わらないでくれ〜…


私の心からの叫びも虚しく、時計の針は刻々と過ぎていく。


受験生なのに机の上には漫画の山。

あちこちにお菓子のゴミが広がっている。


来夏の部屋には宿題どころか勉強した形跡もなかった。



…が、なぜかあちこちに広がる参考書の山。


もう一度言うが、来夏は()()()なのである。




筆者の疑問。

読者の皆もきっと、同じことを思っただろう。


受験生がこんなにだらけた夏休みを送っていいものか?


というか、そんな奴はこの世の中にいるのか…??


その疑問の答えはここにあった。


いた。(ここに。)


おいっ…!(筆者の心の声)




………10分ぐらい経っただろうか。


「らいか〜、きちんと宿題してるの?」


階段の下から聞こえるお母さんの声。


ビクッ‥‼︎

来夏は立ち上がった。


あー、ヤバイヤバイ!


参考書のページ変えとかなきゃ!

バレるとめんどくさいからなぁ〜



…って、おいっ…!(2回目)


今日もまたバタバタ漫画を隠す物音が、静かな住宅街に響き渡っている。


隠すのなら、もう少し静かに…ね…?


思わず筆者はつぶやく。


だが、この慌ただしさも来夏の性格を物語っているようだ。





空は夏に合わない不気味なねずみ色をしている。

今日も雨が降りそうだ。

電柱にはカラスが、その体に似合わない寂しそうな目で孤独感を紛らわしているように見えた。



来夏は、空を見上げて背伸びした。


「う〜ん…、、」


首を回すと、コリコリとやば〜い音がしている。


きっとあれか…来夏は思った。最近の若者に多いやつ。

「スマホ首」ってやつだ。


まぁ、私の場合、スマホじゃなくて漫画だけど…

下を向いてじぃーっとしてることに変わりはない。


そう考えるとなんか私、いい子な気がしてくるなぁ。

スマホより勉強してるっぽい感じするじゃん。


…いや、勉強じゃないよ!(by筆者)

思わずつっこんでしまった…(筆者反省…)




だって。読書と変わんないでしょ、漫画読むのも、ね?

「読む」んだから…


同意を求められてもねぇ…(by筆者)



……なんてことを思いながら来夏は参考書を机の上に出し、また、漫画を手に取った。




親バカ?な筆者は、


でも隠すってことは…やっぱり、受験生なのにだらけ過ぎてて勉強しないとヤバイっていうことは主人公(ライカ)にも分かっているのね…。


と、理解しようとした。(というか、そうであって欲しかった。)




が、しかし、


そんなに上手くはいかないか…その時、来夏は…


「おんなじページ開けてたら、やってないのバレるからなぁ〜」


あ〜…と大きなあくび。


反省してないんかいっ!(筆者の心の声)


(まぁ、やっぱりかとしか言いようがないが…)


来夏からは反省の気配は全くと言っていいほどなかった。


おいっ…!!!!(3回目)


こんな感じで、主人公、大丈夫なんかぁ??

思わず出た関西弁。

筆者はこれからの来夏に不安でいっぱいだった笑。







来夏は、この夏休みを最高にだらけていた。






一度ついただらけ癖は治らない。


()()、ゆっくり起きて、明け方に寝る。


日中は食事と、トイレ以外には一度も部屋を出ず、一日中漫画を読む。


42日間、ずっとこの生活だ。



そして、今日がその最終日。


こんなにだらけた生活も、今日でおしまいだ。


明日からはまた、新学期が始まる。


そうだよね、来夏?






「まぁ、いっか。」

来夏はこの夏、この一言で全てのことを投げ出してきた。


勉強も、部活も、行事や()()()()さえも。



来夏にとって、それらは()()()()()()ことらしい。


たとえ周りの人がなんと言おうとも自分の部屋で漫画や小説を読んだり、パソコンで好きな芸能人について調べたり、ゲームをしたりする方が楽しいみたい。



だから来夏は、今日も一日、宿題の催促にくるお母さんを騙して、だらけまくる…はず…だった…





の…に……








フフフフッ……


どこからか不気味な笑い声がした気がした…





気のせいかな、来夏はそう思った。






そしてまた、ひとときの静寂が来夏を包み込む。















ガチャ…


不意に、後ろからドアを開ける音がした。


うっ……って!!!!!!!?


まさか……………??


嫌な予感が……


スゥッー…


ぎゃっ!?????



「こら〜ーーー〜!!!!!!」



ビクッ!!!…


来夏の悪い予感は見事に当たった。



振り返ると、カンカンに怒った母がいた。


()()()〜(怒)」


仁王立ちした母はまるで閻魔様の生き写しそのものであるかのように来夏には思えた。


「ごっ、ごめんなさ――い…」


(あぁ、最悪だぁ……)






そして、、




三時間後…。


あれから三時間、来夏はずっと机に向かっていた。




ふぅ〜。

来夏はため息をつく。


すぐ横には鬼の形相した母が!!!


怖いって…


実の親が恐怖でしかないってどゆことよ?


今、現代ではあり得んでしょー……




ってゆうか、宿題終わらないよー(T_T)


まぁ、それは、この夏休みずっと遊んでた私が悪いんだけどね。

(あ、分かってるのね…by筆者)





しかし、…


このままでは、私は死んでしまう…


宿題に、母に、殺されてしまう。(ちょっと大袈裟じゃないか?いくらなんでも死にはしないよ…by筆者)






あぁ、どうしようか…


どうやったら、母の目を盗めるだろうか?


宿題なんて、正直どーでもいい、私には。


世の中の大人って、なんでそんなに子供に宿題をさせたがるのかなぁ、、

なんで子供に敷かれたレールの上を走る鉄道になってほしいのだろうか。


そんなことを考えていたら、いつのまにかボーッとしてしまっていたらしい。


さすがの私の母だ、そんな私に気づいてすかさず怒る。


「何やってるの?手が止まってるじゃない!早くやりなさい!!」


ホント、暇人だなぁ。


だって、ずぅーっと、私の横に居るんだよ?

忙しい忙しいって言いながら、私の横に何もせずに居るんだよ??



私のことをギロッと睨むその顔は本当に実の母親なのか?と疑いたくなるぐらい怖かった。


「…返事は??」


ニコッと、怒りが混ざったものすごい笑い方で私を見てくる。


「はいはい。」


「はいは一回!」


「は〜い…」


はぁーーー。


「最悪な一日」になりそうです。




「でも、「最高の一日」にもなるよ。」

どこからかそんな声が聞こえた。


なんだか寒い…

なんだか怖い…

来夏はそう感じた。


何でだろうか?


早くも来夏は何かが起こるような、そんな予感がし始めていた。


でもこの時来夏は、それがなぜだかわからなかった。



そして、その予感は良くも悪くも的中してしまう。

来夏の想像を絶する形で。


来夏はまだ、そのことを知らない。








はぁ〜〜〜。


カタンッと、来夏はペンを置いた。


またまた母が、


「何をため息ついてるの?


あなたが、私を騙して宿題を残してたのが悪いのよ?


いい?

私は本当はあなたにこんなことしたくないのよ?


だけどそうしなければあなたは宿題を一つもせずに明日を迎えるつもりでしょ?


これは、あなたのためなのよ!!」



さすが私の(ママ)!噛まないでよく言えたね。

来夏は皮肉たっぷりの顔で母を見つめた。



一気に言い切った母は、ハアハアと息を整える。


よくもそんなに早口でまくし立てれるものだ。

つくづく尊敬するよ。


と、来夏はこそっと心の中で呟いた。


ここぞとばかりに母は、痛いところをついてくる。


びしっと決めポーズした母は、まるで自分がドラマのヒロインにであるかのようだ。


「あなたのためなのよ?」かぁ〜。


そのセリフ、いつもいうよね。


本当に私のこと思ってくれてるんなら、今すぐ部屋を出て行って欲しいんだけど…


この量を答え写さずに終わらせ、とは鬼だぞ?



それに、そんなに怒れるほどの元気があるなら運動でもしてくればいいのに。


そんな体型じゃあ、人にだらけるななんて言葉言えないと思うけど?


と、来夏は思ったが、口には出さなかった。


またまた大声で噛みつかれるのがめんどくさいからだ。




またまた一時間が経過…。


…よしっ!……今だ!


母が、トイレに行くために部屋を出て行った。


ガサガサガサ…



珍しく、来夏の部屋からもの凄い鉛筆の音が聞こえる。


つかの間。




…バンッ!


勢いよくドアが開いた。


ヤバっ…と、来夏は思ったが「()()」を隠す時間など到底なかった。


ドシドシと母の足音が来夏の部屋に響き渡る。


そしてそれは、来夏の真後ろまで…


……………………ポカッ…


…痛っ!


なんで殴るの?

ちょっと答え見ただけで殴る必要なんてないじゃない??


いくらなんでも酷すぎるよー


そう、来夏が反論しようと振り返ったそのときだった。


「なに答え写してるの?


終わってないのはあなたが悪いんじゃないの!

きちんとやりなさい。


他の子はみんなちゃんとやってるんだから、あなたもやるのよ?わかったかしら??


それに、こそっと答えを見ようとしても無駄!

お母さんには全てお見通しよ!」


もう一度一気にまくし立てる。

あ、そうだ読者のみんなに言うの忘れてたんだけど、私のお母さんは大のアニメ好きなの。

だからいっつもアニメっぽくなりきって話す。


よく噛まなかったね、と褒めたいぐらいだ。



そして母は、またまたカッコつけて決めポーズをとる。

これは◯◯学園っていうアニメの、主人公のポーズらしい。


鬱陶しいなぁ、マジで。

ちぇっ……


「これも、あなたの為よ!」

もう一度ポーズを決める母。


またそれ言うか。


何度目だろうか。いや、何千回目だろうか?

また、「あなたの為」かよ!



うざったるいなぁ〜、ほんとに。(みんなもそう、思わない?)


「で、残ってる課題はこれだけ???」


「うん、そうだよ。」

そう言いながら来夏は母にバレないように残りの課題を足で机の奥に押し込んだ。


「本当に?」


「うん。」


……じっと母が私の目を覗き込む。


「絶対うそよ。怒らないから見せてみなさい。」


「だから、ほんとにこれだけだって。」


「お母さんに、嘘は通じないのよ?」


「嘘じゃないもん。」


「怒らないから出しなさい。」


今日の母はしつこい、来夏はそう思った。


「なんでそうやっていつも私のこと疑うの?」


「いっつも嘘ばかりついてるじゃない!この間のゴールデンウィークの課題だって、終わったって言ってたのに結局何もしてなかったでしょ?」


「そのときは、その時なの!」


「それだけ言うなら、やったワーク見せなさい。」


「いや!でもやってるもん。ちゃんと…」


ほんっとにしつこいなぁ。


まぁ、毎年こうだからもう慣れたけど。


そんなに聞かなくてもやってるよ。ちょっとだけ。

まあ、終わってはないけどね……!!


「ちょっと、勝手に見ないでよ!」


いつのまにか母が勝手に私のノートを見ていた。


「ほら、終わってないじゃない!!!」


「だって…」


「だって…なに?」


「何にもないです。」


()()()〜!!!早く宿題終わらせてしまいなさい。」


そう言って母は私の部屋から出て行った。


今日でちょうど42回目。

お母さんが宿題の催促をしてきた回数。

毎日毎日ホントに暇なんだなぁ、大人は。


「宿題をしなさい、勉強しなさい。って、本当は言いたくないんだからね。お母さんは来夏のことを考えて言ってあげてるだけなの。」


お母さんはいつも言う。


私にとってそれは言い訳に過ぎないと思っている。

ホントはそんな事思ってないはずだ。


きっと、外で自分の子供のことを自慢して周囲の人に褒められたいだけだ。

自分の見栄を張りたいから子供をいいように利用したいだけだ。



実際、母はよく私に、文句を言ってくる。


「隣の家の〇〇くんは、この間テストで100点とったらしいわよ。成績も優秀で、将来はT大を目指してるんだって。

あなたも〇〇くんを見習いなさい。


ほんっと、あなたがもう少し出来が良ければお母さんも大きな顔できるのに、恥ずかしくて、この間の婦人会でも端にいるしかなかったわ。」





大人はみんなそうだ。

周囲の人に対していいように振る舞う。

自分のためになることなら少しぐらいなら嘘をついても平気だ。


すぐに話を盛る。


嘘もつく。


忖度をするのは当たり前だ。と、子供に押し付ける。


悪いことも、悪いと言ってはいけない。

大人は、全て。

子供は大人のいいなりになればそれでいい。

大人が「黒」といえば白くても「黒」というのがいい子だ。


なんなんだ?この世界は。




来夏は日々、そんな大人への憤りを感じていた。








「人生の先輩の言うことを聞きなさい。」

ある日、学校の先生は来夏にそういった。


「大人の言うことは絶対」なのだと。


しかし、何故そうなのか?と聞いてもそこにきちんとした答えはない。


「長い間生きてきたら色んな経験があるから。」


それは、果たして理由になるのだろうか??

確かに、経験が役に立ったり、そのおかげで物事がうまくいったりすることもあるとは思う。


だから、先生の言っていることは正しいのだ。

しかし、それは場面によっていいように利用されている。



社会的な立場が強い人はいつもそうだ。と、来夏は思う。

全てを自分の思い通りにしようとする。


「○○の言うことは聞きなさい。」

よく聞く言葉。

それは、いつもどんな時でも使われる。

○○さんの、○○先生の、お母さんの、お父さんの…


例えそれが悪であったとしても、私たち子供に反論の余地はない。


私は、人形じゃない。



来夏は、心からそう思った。




また、ある日、来夏はお母さんと喧嘩をした。

「お母さんの言う通りに〇〇をしなかったから。」

という理由だ。


あまりにも理不尽だと、来夏は思った。

お母さんは、「人生の先輩に逆らうな。」と言った。

力が強いからって、

立場が強いからって、

社会は、

何故こんなにもおかしいのだろう。


なんで、

こんなに、

理不尽に埋め尽くされ、


不公平であるのだろう。


子供の来夏にはそうとしか思えなかった。








一方、あれから二時間後。


時計の針はもう9を指している。


眠たいなぁ。


「来夏〜!」


母はまた、しつこい。


「ねぇ、来夏!聞いてるの?早く宿題終わらしなさい。」

母の声が耳の端から端まで通り抜ける。


「わかったよ」


と返事しながら来夏はパソコンをいじっていた。


電子図書で、マンガを読むためだ。



宿題はもう終わらせた。

といっても、「答えを写し終えた」というのが正しいのだろうが。

でも、終わったんだから、もう遊んでもいいよね。


「あ、これ面白そう。」


「プリンセスレスキュー隊」だって。

なんか、すごい題名だなぁ。


よし、これ読んでみよう!


クリック…っと……



ポロン。


パソコンに1通の手紙がとどいた。

急になんだろう?


それは、不思議な手紙だった。


不審に思いながらも、なぜか来夏は、その手紙の中をみたい衝動に駆られた。


「あなたを夢のような世界に招待します…」


美しいBGMと共にカラフルな文字が手紙から溢れ出てくる。



来夏は、まずいかな?というふうに思ったけれども、結局理性が好奇心に負けてしまい、クリックしてみることにした。




パチン!


ドキッ‥!!!

来夏は一瞬、心臓が止まったような気がした。


急にパソコンの電源が切れた。


しまった!と後悔してももう遅い。


パソコンウイルスのソフトが仕込まれたメールだった。と、来夏は思った。


画面に浮かぶたくさんの「9」という数字。


最悪だ…

と思ったその時だった。



私の第二の人生が始まったのは…………………………。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ