6
「なんだい、ドジだねえ!がれあ山とがれき山を間違うなんて!」
「しかも移動キー忘れたなんて!ひーひーひー!」
「そりゃ大変だったよねえ!愛しい人に会えると思ったらゴミばっか!」
「あー、おかしい。」
散々笑われ一旦場が落ち着いたころ、マジルが帰ってきた。
「外まで笑い声が聞こえてるべよ。あ、母ちゃん兄ちゃんから手紙来てたど。」
ほれ、と一通の手紙を差し出した。
「どれどれ。」
封をびりッと開け手紙を読みだすとマジルの母は、ふむふむ、と言ってマジルを見た。
「マジル、あんた姉ちゃんのとこ行ってちょっと様子見てきておくれ。」
「えー、なんでだべ?面倒くせえから行きたくないべよー。」
「姉ちゃんな、まあた彼氏と別れたんだと。そんで今回はちょっと酷いみてえなんだよ。」
「げげげ。んじゃ今頃荒れてるべ?オラ行きたくないだよ。」
「ちょっとの間で良いからお願いするだよ。小遣いもはずむだよ。」
「しゃーねえなあ。んじゃついでにイリアも送ってくるだよ。」
話は進み、なんと明日に出発することになったらしい。
「ねえ、あんたのお姉さんってどんな人なの?」
「がれあ都で占い師やってんだ。当たるって結構人気なんだあ。」
「へえ。そんで?」
「姉ちゃん人のこと見るのは得意なんだけど自分のことに関してはからっきしダメ。
何でかわかんねえけどダメンズ?っていうやつばっか好きになるみてえでな。
そんで別れると周囲が荒れるんだ。
ちっちゃな竜巻とか風切りとか闇とか勝手に出ちゃうみてえでなあ。」
「・・・なかなか怖いわね。なんなの、闇って。」
「なんかよお、こう、ぼわっと黒い霧みてえなもんがな。」
背のあたりから黒く禍々しいものがぼわっと出るらしい。
「オラよお、実は治癒子でな、そういう変なもん治せる性質なんだべ。
んだから姉ちゃんがダメなとき呼ばれるんだあ。」
「治癒子?」
「なんだあ、おめえ知らねーの?」
「いいから教えなさいよ。ほら、早く。」
若干上から見られイラっとしたので軽く蹴飛ばした。
「痛。女ってみんなこんなんなの?オラ、もうやだ。」
ぐすんと泣き真似をするマジル。
「治癒子ってのはその名の通り、癒し治す力がある子ってこと。
ただ希少で、あんまり都にもいないんだ。」
「なんだかマジルあんたって実はすごいんじゃないの?」
「んだなあ。」
ぽわぽわと話すマジルになんだかイリアもつられてぽわぽわしてしまう。
そういえばこれもヒーリング効果なのかしら。
「移動キーで行くんじゃないの?」
「高いから徒歩で行けって母ちゃんが。」
「マジルのお姉さん大丈夫なの?急いでるんじゃないの?」
「大丈夫だって母ちゃんが。
本気でヤバいなら姉ちゃんがこっちの家に向かってるけど、手紙で待ってるって書いてあったからって。」
「ここからどのくらいで着くの?」
「2日くらい。あ、イリアも荷物少しはもってな?」
どどん、とリュックと渡された。
「なにこれ。」
「何って寝袋とか食料とかに決まってるべよ。野宿になっからな。」
渡されたリュックが急に重くなったようなきがした。
「ほんでこれに着替えな?姉ちゃんのジャージ残ってて良かったべ。」
あずき色で、足首のほうがきゅっとゴムでしまるだっせえジャージを渡された。
ねえ、待って。
私、お姫様。
ひらひらした可愛い服をきるお姫様じゃなかったけ。
鏡にうつる私はお姫様のはずなのに、だっせえジャージ。