禁断の果実
悩ましい・・・
「はぁ・・・はぁ・・・。」
全身が痛い。
狼から受けたダメージで身体中が悲鳴をあげていた。
傷口からは血が止まることなくでていて、体力を奪っていく。
それでも足だけは必死で動かす。
少しでも遠くへ。あの熊から離れなくては。
「ぐっ・・・。」
今すぐにでも意識を手放して倒れてしまいたい程に辛い激痛が体をはしる。
それでも確実に前に進む。
そうしてどれくらいの時間進んだのか分からないくらい進んだ頃。
俺はふいに何かに導かれるように自分の意思とは関係なくある方角へと向かっていた。
しばらく歩くと眩い光がみえてきた。
「これは・・・・。」
そこにあったのは黄金の実がなった樹木だった。
不思議な光景に思わず見蕩れるも俺の体は無意識にその木へと向かっていた。
そして俺はその実を取ってみる。
見た目はリンゴのような果実。それが黄金の眩い輝きを放っていた。
普通に考えればまともな食べ物のはずはない。食べない方がいい部類のものだろう。
しかしその時の俺は不思議とその実を食べても大丈夫だと直感でわかっていた。
俺は実をかじる。
味はほんとにリンゴにそっくりと思いきや若干甘味が強くてどちらかというといちごのような味がした。
一口、二口と徐々に食べ進めていく。
そして俺はその実をすべて口にした。
「ぐっ・・・・。」
とたんに体に異変を感じた。
体中が暑い。全身が焼けるような感覚。傷口からの痛みとは違う自信の本質が変えられてしまうような感覚。
「あがっっっ!」
徐々に意識が消えて俺の全てが消えてしまうような感覚がおそってくる。
そして俺はその感覚に身を任せそうになる・・・
・・・ところで脳裏に鶴姉の顔が浮かんできたことで俺の意識は急激に覚醒していく。
そうしてどれくらいの時間がたったのだろうか。
ようやく激痛が消えてから俺はそのことに気づく。
そうさっきまであった狼に受けた傷が消えていたのだ。