野生
今回はちょっと読みにくいかもですがプチグロ描写を入れてみました。あまり好きではないかたは速読をオススメします。
目が覚めると辺りは見知らぬ場所だった。
いかにも迷宮という感じの石作りの壁に回りには何故か何ヵ所かに松明と思わしき明かりがみえてわずかに辺りが見通せた。
「痛てて・・・。」
落下した時に腰を打ったのか若干痛むが、なんとか立ち上がる。
「そういえばヨシア達は・・・」
辺りを見渡してもそれらしき人影は見当たらない。
記憶を掘り起こしてみるとみんな一緒に落下していくのはなんとなく覚えているので自分とは別の場所に飛ばされたのだろうか?
「グル・・・。」
そんなことを考えていると何やら後ろから物音がして振り替える。
そこにいたのは狼のような姿をした動物と呼んでいいのか分からない生き物だった。
「グルル・・・」
狼はこちらをじっとみながらヨダレをたらしていた。
「嘘だろ・・・まさか。」
嫌な予感にとらわれたつかの間、狼は俺目掛けて思いっきり飛び掛かってきた。
「うお!」
間一髪で避ける。が狼はその俊敏な動きで俺の逃亡を逃がさない。
「痛た・・・。」
左手から鈍い痛みを感じて見てみると服が破れて出血していた。
「まさかさっき当たってたのか・・・!」
なんとか避けたつもりがどうやら狼の鋭い爪が当たっていたらしい。
痛みで動けなくなりそうだが、俺はなけなしの理性で逃亡を試みる。
「くそ・・・!」
今の俺には何も武器はない。あったとしてもあいつに勝てるかどうかも分からない。
俺が逃げると狼はすかさず追いかけてくる。
「ガウ!」
「いっつ!」
またしても狼の爪が背中に食い込み血がでる。
殺される。食われる。怖い。痛い。そんな負の感情が沸いてくるが、それでも痛みを我慢して走る。
何度も同じように狼にいたぶられる。
そう。いたぶられているのだ。
どうやら本能だけで行動している獣の類ではなく理性が若干あるようで、そして考えることができる知能があるようだ。
狼は俺が逃げるのを楽しむように後ろから追ってくる。
俺は痛みを必死で我慢しながら逃げるが、やがてそれにも限界が訪れる。
行き止まりにぶつかった俺は後ろから狼にまたしてもさっきと同じ位置に攻撃を受けて倒れてしまった。
「ぐっ、あ、・・・。」
「グルル・・・。」
まともに言葉を発するのもできない俺を見下しながら狼は嬉しそうに唸る。
「く・・・っそ・・・。」
ここで死ぬのか。そんなことを思いながらも俺は最後に一緒にこちらの世界にきた姉の姿を思い出す。
「ま・・だ」
まだ死ねない。せめて鶴姉が生きてるかだけでも知らないと死ねない!
必死に力を振り絞るがもう意識も朦朧とした虫の息の状況の俺には何も出来なかった。
「ガウ!」
そして狼はおれに飛び掛かってきた。
俺は最後まで抵抗しようとするが動かない。
「ギュウ!」
死を予感した瞬間に狼は何故か裂けるような呻き声をあげて辺りは静かになった。
何が起こったのか確認しようとすると俺は何かに持ち上げられた。
霞む視界で持ち上げた主を見てみると、熊だった。
それもやけにファンシーな見た目をした熊だ。
その熊は俺を担いで歩いていく。
助かったのか?そう思ったのもつかの間、俺は熊の寝床とおぼしき場所におろされた。そして熊は一瞬こちらを見た。
そしてその瞳をみて悟る。
熊の目はこちらを食料としてみていた。野生の目だった。
俺はまだ助かったわけではなくこの熊の食料として連れてこられたのだと本能で悟る。
熊はのそのそと俺から離れていく。
どんな事情があるのか分からないが早く逃げなくては。
そう思い俺は痛む体を引き釣りながら歩き出した。