にょろにょろとカラス。
ぼくはみみずのにょろにょろ。
この春に生まれた。
他の季節は知らないが、この季節は気持ちがいいな。
緑が青々して風が気持ちいい。食べ物はいっぱいあるし、気持ちよく眠れる。ぼくはこの季節が大好きだ。
ある日散歩をしていると、突然空気が引き裂かれるような、大きな鳴き声がした。いつの間にか周りのみみずたちが居なくなっていた。ぼくは分からなくてただ立ち尽くしていた。そして気づいたときにはカラスに食べられそうになっていた。
ぼくはカラス。
この春は二回目だ。
ぼくは春が大好きだ。お花がいっぱい咲いてとてもきれいだ。風が気持ちいいし、なにより食べ物がいっぱいあって食事に困らない。ほら、そこにも美味しそうなみみずが。「いただきまーす」
「誰か助けてー!」にょろにょろは叫びました。
「誰も来ないよ」カラスはいいました。
「お願い、助けてー」にょろにょろは泣きながらカラスにいいました。
あまりに泣くようでしたから、カラスは段々かわいそうに思えてきました。
「きみ、名前は?」
「ぼくはにょろにょろ。きみは?」
「ぼくはカラスのカースケ」
「カースケ、助けてくれてありがとう。」
二人は話しているうちに仲良くなりました。
にょろにょろはカラスに聞きました。
「どうして僕を食べようとしたの?世の中には人間が出した美味しいご飯がいっぱいあるじゃないか。僕なんか食べたって美味しくないだろう?」
カラスは答えました。
「ぼくは身体が弱くて、人間の出したご飯が食べられないんだ。だから自然のものを食べているんだけど…もうぼくはにょろにょろは食べないよ!友達だもの。ううん、にょろにょろ以外の生き物も食べないよ。みんな話したらいいやつだもの」
「そしたらカースケなに食べるの?」
「葉っぱや果物を食べるから大丈夫だよ」
「ありがとうカースケ」
にょろにょろは笑顔で伝えました。
そしてにょろにょろとカースケが出会って、はじめての冬が来ました。
「カースケ、寒いよ。寒くて死んでしまいそうだよ」
「にょろにょろ、ぼくが暖めてあげるから元気を出して」
カースケはにょろにょろを羽根で暖めてあげました。
「カースケありがとう。暖かい。ところで最近ご飯食べていないみたいだけど、どうしたんだい?」
「あぁ、冬になって植物が枯れてしまったんだよ」
「なんてことだ!それじゃぁカースケ、お腹が空いて死んでしまうじゃないか!」
「大丈夫だよ。冬が過ぎればまた植物が出てくるから、そうしたらぼくはお腹いっぱい食べるからさ」
よく見るとカースケは少し小さくなった気がします。
元気もないようです。
にょろにょろは言いました。
「ぼくを食べなよ」
「なんてことを言うんだい!絶対嫌だよ」カースケは驚きました。
「ぼくはカースケと出会ったときに、食べられそうになったところを助けてもらった。だから恩返しをしたいんだよ。それに一番の友達として役に立ちたいんだよ。ぼくの想いを受け止めてもらえないかい?」
カースケは泣きながらにょろにょろを食べました。
冬が明け、春になりました。
二人が好きな季節になりました。
カースケは空を飛んでいました。
にょろにょろはもういません。
読んでいただきありがとうございます。
初めての作品でしたので色々想うことありますが、他にも色々書いてみようと思ってます。
想いって不思議なもので、名前をつけると特別なものへ変わるんですよね。
これからも書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。