06:親友が美味しそうに見える件
その日の放課後、私はユンナ様を捕まえた。
ユンナ様の部屋を出て以来、私はずっと彼女を避けていたから、声をかけられてユンナ様は嬉しそうだ。
そのまま、ユンナ様の部屋へ向かった。
「ああ、リルちゃんのことね……」
「はい」
気になっていたリルの所有印について、ユンナ様に相談してみた。
「ずっと前からアイツに目をつけられていたわよ、それこそ私があなたに目をつける前からね」
「はい?」
ちなみに、ユンナ様が私に目をつけたのは、私が廊下で転んで血を流していた時だそうだ。
その時の血の匂いが美味しそうだったかららしい。
全く気付かなかった! 初対面の時だったなんて!
「入学式早々『気に入った子を見つけた!』とか言って、それはもう熱心にマーキングしていたわよ? 嫌ーねぇー、男ってすぐがっつくから……」
ユンナ様は男性に対して非常にドライだ。
リルに目をつけた吸血鬼は男性らしい。
「ちなみに、リルのは誰の所有印なんですか?」
「バラって言ったらアイツよ……リヒト。……生徒会長の」
「……会長ですって!?」
驚いた。まさかリルが会長に気に入られていたとは!
そう言えば以前、彼女が会長に助けられたと言っていた事があった。
……気の毒に。
その頃にはもう、目をつけられていたのだろう。
「ユンナ様、もう一つ相談したい事があるのですが」
「なぁに、ミミちゃん。何でも言ってちょうだい?」
ユンナ様は私にベタ甘だ。
「人間の友達が美味しそうに見えるんです」
「まぁ……」
「特にリルが良い匂いで、四六時中一緒にいるとどうにかなってしまいそうで……少し距離を置いているのですが、そのうち彼女を害してしまいそうで」
私達のような人間上がりで隷属と呼ばれる吸血鬼は、基本的にはマスターとなる吸血鬼の血だけで生きていける。
でも、吸血したいという欲求が全くない訳ではない。
「それは辛いわね。よく分かるわ」
彼女も私を襲うのを我慢している間、それはそれは辛かったらしい。
……あまり聞きたくない告白だった。
「私、自分が怖いです……友達なのに、美味しそうだなんて……」
「分かったわ、うちへいらっしゃい。一緒に暮らしましょう、その方があなたにとっても私にとっても都合がいいわ」
ランチの時に友達も先輩の寮へ移ると言っていた。
合意があれば自由に寮を移れるみたいだし、早速私も移動しよう。
何も知らないリルの心を傷つけてしまうかもしれないが、彼女に危害を加えるわけにはいかない!
私は、その二日後に寮を移った。