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05:新学期に悩む私

 二学期が始まった。

 憂鬱だった。


 リルが実家から大量のお土産とともに帰って来た。

 どうしよう……、彼女は何も知らない……


「ミミ!元気だった?」


 私の事を知ったら、彼女は――


「……ミミ?」


 返事が無かった私を訝しがって、リルが顔を覗き込んできた。


「え……あ……リル?……ごめん、ボーっとしていて気がつかなかったわ……」


 私は、咄嗟に首元を隠そうとして気がついた。

 そういえばスカーフを巻いていたんだった。

 リルにはこの痣は見えていない。


 首元の痣は、一生消えない……アイリスの形のそれは、ユンナ様の所有印だそうだ。

 気がつかなかった。お茶会の時から唾をつけられていたらしい。

 私があまりにも気にするので、ユンナ様は可愛らしい花柄のスカーフを巻いてくれた。


「何かあったの?」


 明らかに様子のおかしい私を、リルは心配そうに見ていた。


「え?……なんで?」


 慌てて誤摩化す。

 どうか聞かないで……あなたに嫌われたくないの……。

 バケモノだって知られたくないの……。


「えっと……何か元気が無い様な気がして……」

「そんなこと……ないわよ……」


 明らかに嘘だ。

 彼女も気がついているだろう。私は嘘が下手なのだ。

 目が泳ぐ。


 ふと、リルの首元が私の目に止まった。

 彼女の首元、ちょうど私のアイリスの印がある辺りに、バラの模様の痣が浮かび上がっている。


「……リル……あなた…………!」

「え?」


 何? という様に、リルは首を傾げた。

 リルは気がついていないのだ。この印が何を意味するものなのか……。

 彼女には既に所有者がいる。


「いえ……なんでもないの……ごめんなさい……。今は言えないけど、必ず話すから……少し待ってくれる?」


 少し迷ったが、彼女は納得してくれた。


 ――逃げて


 そう言うべきなのに、言葉が出てこない。

 あの印を付けられている限り彼女は逃げられないと、私は薄々気が付いていた。


 彼女が私と同じになったら、全てを話そう……

 リルは、こんな私を許してくれるかな……

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