NO.1
この物語は、即興小説トレーニングhttp://sokkyo-shosetsu.com/のお題で進行していきます。
SPICE5にオススメのカップルは『獣人(狼)な五十路×人外な十代、悲恋』です(おさようったーhttp://shindanmaker.com/95626)を取り入れ、
お題:戦争と誤解 制限時間:15分
戦争が終わり十数年。
壮年だった俺も50を超えるつれ冬の古傷の痛みが少しずつ強まりうまく歩けなくなってきた。傷が入った目もほとんど見えなくなり、残った数本の牙で噛みしめるのは柔らかな豆や穀物ばかり。狼族だというのに、これではまるで兎だ。
軍の保障により、退役して長い俺にも奴隷が付くことになった。
「戦争時には随分とご活躍されたと聞いています」
俺の足を湯につけながら奴隷は話しかける。
それは大きな誤解だ。
敵軍に侵入して成果をあげたものの、成し遂げたのは俺ではなく部下の一人だ。帰還途中で銃撃に遭いその部下は死んだ。俺はそのまま自軍まで逃げ延び、勝戦後に勲章を貰った。実際には何の役にも立っていない。
「――終わりました」
丁寧に脚を拭き終わると奴隷は俺を見上げて微笑んだ。
じゃらり。彼女の首の鉄枷が鳴る。
戦争に勝利した後、俺達が得たのは新たな食糧であり奴隷である兎族と彼らの土地だ。
こうしてこの少女も俺の気が向けばいつでも食料として食べていいことになっている。
彼女が俺に向けるのは、気に入られようと媚びる偽りの笑顔と優しさだ。
俺が抱える想いを伝えたところで彼女の心は得られない。
伝えれば、彼女は俺を受け入れるのに違いない――機嫌を損ねまいとするために。
だからこうして、今日も明日も、ただ淡々と世話をされるのみに徹する。
「……爪も切ってくれ」
脚を包み込む柔らかな温もりに愛を錯覚し、そんな自分に哀しい笑みが漏れた。