プロローグ
わたしは、価値がない。
――わたしには、価値がない。
赤色を刻んだ瞳をもたないわたし自身には、なんの価値もなかった――
だれにも、期待されない。
だれにも、褒められない。
与えられるのは、蔑みの視線。疎む視線。
それを自覚するようになって、わたしは自分を呪う。
――生まれてごめんなさい――
――兄上さまと姉上さまとおなじで、赤い目じゃなくてごめんなさい――
――消えるゆうきもないの……ごめんなさい――
その瞳の色は、彼女を苦難へと放り込んだのかもしれない。
魔界の革命により、オースティン帝国という名になって数千年。レイラは、魔王であるヘンリー5世の次女として生まれる。
彼女は、魔族の王族特有の赤き瞳を持たずに生まれた。それが、彼女の環境を決めてしまう。
彼女は、赤子の頃から部屋の中で軟禁されていた。それは成長しても変わらず。幼いレイラは泣き喚いた。
「ははうえ、あいたい! ちちうえは……!?」
「そといく! いきたい!」
「うわあああああん!!!」
泣いても、意味はなかった。6歳になってからのある日まで。
凄まじい音がレイラのいる部屋から聞こえると同時に、巨大な魔力が部屋の中から放たれていた。その魔力に、城を守護する精鋭部隊の隊員が駆けつける。
「!」
頑丈な壁とバルコニーは吹き飛び、部屋の中は無惨な状態で、見張りの侍女は倒れていた。その中心にいるのは6歳になっていた少女のレイラで。泣いているレイラの幼い身体から、具現化した闇の魔力が――溢れていた。
「レイラ!」
気を失ったまま連れて行かれるレイラに、手を伸ばそうとする母親のキャサリン。それを城兵が制した。
キャサリンは伸ばせなかった手を握りしめる。辛いのが分かる表情だった。
レイラは、強大な魔力を持つことが判明した。強大な魔力を持つ王族を増やす母体として、後々を期待された。
けれど、それでも彼女の境遇は変わらない。
むしろ、魔力が暴走したことで別の地域へと移されたのだから。
――彼女は母にすら会えなくなった。




