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「………」
『俺の優しさだけの正義じゃ、誰も救えないんだ……っ!』
望命くんの言葉が、僕の脳内に鮮明にフラッシュバックする。
―――あれから、何日の時が経過したのだろうか。
あの雨の日以来、望命くんには会っていない。
メッセージは送っても何時まで経っても既読にならないし、クレインサーベイの事務所に行けば、会えるだろうけれど、僕には、その勇気がない。
彼に何を話せば良いのかも分からない。
ここに来て、やはり僕はヒーローにはなれないのだろうと思ってしまうと同時に、誰かを救うヒーローじゃないから、彼を僕が救わなくて良いのだという事実に安堵してしまう。
けれど、その安堵とは裏腹に、望命くんを救えない自分に自己嫌悪を感じて、頭を激しく掻く。
苦しい事も、辛いことも乗り越えてきた望命くんなら大丈夫だと、こんな結末にはならないだろうと思ってしまった僕には、もう彼をどうすることもできない。
ただ、これまでと同じ様にカフェの定員として働く、それしか僕には出来ないのだろう。
だから今日も僕は、キッチンに立つ。
それしか、今の僕には出来ないから―――。




