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計画は望命くんの予想通りに進んだ。
告発文が投稿された翌日には、帝小学校のウェブサイトとSNSは炎上し、学校には抗議の電話が殺到。
八重花さんの父親は、寄付を餌に学校に圧力をかけようとしたが、大衆の怒りは彼らが思っていた以上に大きかった様だ。
学校側は事態の収拾を図るため、すぐに全校集会を開き、維蘭くんへの謝罪と、キーホルダーの弁償を約束した。
「すごい!望命、本当に魔法みたいだ!」
維蘭くんは、すべてが解決したことに満面の笑みを浮かべた。
しかし、望命くんは何も言わず、ただ静かにその様子を見つめていた。
彼の表情には、満足感も達成感も感じられない。
代わりに、深い虚無感が漂っているように見える。
その夜、コルリスで二人きりになった時、僕は意を決して望命くんに尋ねた。
「…望命くん、本当にこれで良かったの?
あんなやり方、八重花さんも傷ついたはずだよ」
「…それが、大衆の裁きなんだよ、瀬名くん。
彼女は自分のしたことの代償を払っただけだ」
「でも、あんな風に追い詰める必要は……」
「あったんだよ。二年前、俺は優しさだけで諳さんを救おうとした。
大衆に真実を突きつけても、彼らは見ようともしなかった。
その結果、諳さんは死んだ。
同じことを繰り返すわけにはいかなかったんだ」
望命くんは声を震わせ、その頬に小さな光を灯した。
彼の瞳には、怒りと悲しみが混じり合っていた。
「俺の優しい正義じゃ、誰も救えない。
この街じゃ、強引にでも悪を裁かないと、また誰かが犠牲になるんだ。
もう…誰も死なせたくない…」
そう言って、望命くんは静かに涙を流した。
その涙は、彼の心に残った最後の純粋さのように見えた。
―――『許されざる間違い』終幕―――




