〈file7〉
「…そこで、提案があるんですが―――」
望命くんは端末を開き、僕らに画面を見せた。
そこには、帝小学校の保護者専用ウェブサイトが表示されている。
「このサイトの掲示板、使わせてもらえませんか?」
望命くんの言葉に、教頭先生は困惑した表情を浮かべた。
「しかし、ここは保護者専用なので、君たちには……」
「大丈夫です。必要な情報は全部ありますから」
そう言うと、望命くんは眞人くんと顔を見合わせた。
「眞人、頼める?」
「余裕。3分もあれば、このサイトのセキュリティなんて抜けられる。
それに、教師用のアカウントだって、プレベントのデータベースに全部入ってる。
でも、望命……」
眞人くんが言葉に詰まったと同時に、横綱教頭は驚きの声を上げた。そして、望命くんは続ける。
「教頭先生にして頂きたいのは、僕が作った文章を投稿する事です。
すべて匿名で、個人名や学校名も伏せます。
ただ、とある学校で起きた出来事として、今回の経緯を客観的に記述するだけです」
「…それは、どういう狙いが?」
「大衆を巻き込むんです。
彼らは、真実より都合の良いストーリーを求めている。
だったら、僕らが彼らにとって都合の良いストーリーを提供してやる。
つまり、『傲慢な資産家の娘と、それに媚びる学校』という悪役と、『理不尽に陥れられた少年』という被害者を用意してやる。
そうすれば、彼らは面白がって僕らのストーリーに飛びつきます。
あとは、彼らが勝手に正義を振りかざして、学校に圧力をかけてくれれば……」
望命くんの冷徹な言葉に、僕は背筋に冷たいものが走った。
こんなやり方、以前の望命くんでは考えられない。
しかし、彼の目は真剣だったのだ。




