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「望命くんが言ってたでしょ?
眞人くんはね、情報収集の天才なんだ。
普通、望命くんや冬李さんがこのCRIMINAL CITYの住民の事を調べようとプレベントのデータベースを使っても、最低でも二時間は掛かる」
「だけどあいつは一人の子供や大人、すべての情報をわずか三分で割り出してしまうほど頭の回転が速い。
まぁ、バカなのはバカなんだけどね」
「そうそう、勉強は出来ないんだよね」
「おいそこ、聞こえてるからな!
……っと、胡琶出たぞ」
僕らが眞人くんのことを説明しているとなぜか少し維蘭くんが引いていた気がする。
どうしてなのだろうか。
僕にはさっぱり理解できないが、そんな僕らにツッコんで来た眞人くんがある画面を見せる。
そこには、八重花と言う資産家が莫大なお金を支援、寄付している団体の一覧表が映し出されていた。
そしてその一覧表の〝ある学校名〟に赤い棒線が引かれてあるのが見える。
学校名は帝小学校。
僕らの母校でもあり、維蘭くんが現在通っている学校である。
話が飲み込めなかったらしい維蘭くんが望命くんと眞人くんにこう尋ねた。
「?えっと、つまりどう言うこと?」
「胡琶がこれを調べろって言ったって事は……大体の事情は分かったんだろ?
維蘭にも教えてやれよ」
「うん、そうだね」
そう言って望命くんが維蘭くんに語ったのは、紛れもなくこの事件の真相だった。
維蘭くんのキーホルダーを壊した八重花さんの家は父親がかなりの権力者であり、大金持ちの資産家で、その資産を帝小学校に寄付していると言う事。
そして、そんな寄付をしてくれているご家庭に〝貴方のお子さんが壊した男の子のキーホルダーを弁償しろ〟何て言えば、寄付はもちろん止まるだろうし、今までのお金も返せと要求されるかもしれないと言う事。
相手は権力者で資産家の家庭。
運が悪ければ最悪、帝小学校の悪評をばら撒かれかねない。
そう判断した学校は〝その揉め事〟自体を白紙にした、と言うのがこの事件の真相だ。
世間体を気にするこのご時世、学校側も大事にはしたく無いのだろう。
まぁ、だからと言って維蘭くんがすべて悪いと決めつけられると他の生徒まで八重花さんに同調する恐れもある。
学校が下した判断が吉と出るか凶と出るか……。
「そんなの嫌だ……!何で俺悪く無いのに責め続けられなきゃいけねぇんだよ!
おかしいじゃねぇか!」
「そうなんだよね……。!」
ここで望命くんは名案が思い浮かんだのか、眞人くんにある頼み事をする。
「眞人、帝小の〝教頭先生〟にクレサイとしてじゃなく、〝樹羅眞人として〟連絡取れる?」
「?教頭なら確かこの三年変わって無かったはずだからクレサイとしてじゃなくても連絡取れると思うけど……。
何するんだよ?」
「魔法をかけるんだよ。
権力者にも、資産家の令嬢にもお灸を据えられる、とっておきの魔法をね!」




