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そんな望命くんの言葉にじゃあ……と話しを続ける維蘭くん。
彼の話しをまとめるとこうなる。
一週間前、学校で同じクラスメイトの八重花と言う女の子と大喧嘩になったらしい。
喧嘩の発端はその八重花と言う子が維蘭くんの大事なイニシャル入りキーホルダーを奪ったから。
どうやら維蘭くんの学校には「玩具になりゆるキーホルダー等は持ってきてはいけない」と言う決まりがある様だ。
そして、そのキーホルダーを持ってきていた維蘭くんに気付いた八重花さんが、彼のキーホルダーを持って担任の先生にチクリに行こうとした所を維蘭くんが奪い返そうとしたら、キーホルダーが壊れてしまった。
それでも、先生に言いに行こうとする八重花さんを壊された事が許せない維蘭くんが彼女の服を掴んだ所に担任の先生がやって来たそうだ。
つまり、先生は維蘭くんが八重花さんの服を掴んだ所しか見ていないわけで。
「それで全部その子の服を掴んだ維蘭くんが悪いってことになったって?」
「うん……。八重花、いっつも先生に媚び売って良い子振ってたから……。
先生も見てないことは信じてくれなくて」
「なるほどなぁ……」
「確かに女の子の服を掴んだ維蘭くんも悪いが、先に物を壊したのは八重花さんだろう?
彼女の方が、やってはいけない事をしていると思うが?」
「だろ!でも俺の親もお前が全部悪いって……話しも聞いてくれなくて……」
「その子と担任の先生のフルネームは?」
望命くんが維蘭くんに尋ねれば、彼はえっと、と先程までの警戒心を解き、彼女らの名前を教えてくれた。
キーホルダーを奪ってきた女の子の名は八重花千瀬さん。
八重花という名前は何処かで聞いたことがある気がするが……今はまぁ良い。
そして担任の先生だと言う教師の名は虎谷依寄だと言う。
ご丁寧に漢字までクレインサーベイの応接机にあった破られた紙に書いてくれた維蘭くん。
そんな維蘭くんから破られた紙を受け取って望命くんの正面で先程から端末を広げて調べ物をしている眞人くんの前に置いてみせた。
半透明な青色の端末が眞人くんの真正面と左右、それかろ同じ色のこれもまた半透明なキーボードが彼の手元に広げられている。
その端末の端には〝プレベントデータベース〟と書かれてあり、真正面と左右の端末に並べられた文字が、脱兎のごとく移り変わって行く。
これが、眞人くんの嘘を見抜く事以外のもう一つの特技。
―――情報収集能力。
そうか、久しいから忘れていた。
眞人くんは本来、頭の回転が速いんだ。
そんな眞人くんに疑問を抱いた維蘭くんが僕に眞人くんが今何をしているのか、どうして凄いのか聞いてきた。
そんな彼に僕は……。




