〈file12〉
靴や靴下を脱ぎ、延朴塔にある螺旋階段の続く最上階に登り、カンカンと照る太陽に照らされた諳さん。
そんな彼を引き止めるために、結鶴さん除くクレサイのみんなは螺旋階段を駆け上がった。
運良く眞人くんが諳さんの腕掴んだ。
最後のチャンスだと思い、そこで諳さんを説得する言葉を紡いだ望命くん。
そんなクレインサーベイのみんなに諳さんが遺した最後の言葉が……
『俺の所為だから仕方ない。胡琶達や大衆は関係ない』
覇気のない顔で、最後に綴られた諳さんの言葉。
その言葉を遺して、諳さんは眞人くんと一緒に落ちてしまった。
「まず、通り魔とは誰なのかと言う事を解かなければ、この事件は一生進みません」
「?いや、通り魔は通り魔で……」
「所が違うんです。
通り魔にも君島さんの彼女を殺さなければならない理由があった。
あの通り魔は、君島さんに罪を着せるためだけに君島さんの彼女を殺したんです」
「……望命くん、そうなると犯人の狙いは元々……」
「……君島さんへの怨恨だ。
それが諳さんにバレてしまったから、今度は諳さんを殺そうとした。
でも、諳さんは犯人自身で手を掛けなくとも大衆の、善良な市民の言葉であの場に立った……」
みんなが望命くんに注目したこの緊迫した状況で、彼はいつもの動揺を見せず、真剣な眼差しを僕らに向ける。
君島さんの彼女を殺した動機が彼への怨恨なら、君島さんの知り合いが犯人だと言う線が一番濃くなる……。
なら、彼の知り合いを片っ端当たっていけば手がかりになるはず。
そう思って望命くんに話しを持ちかけると、彼は無言で首を横に振った。
「いや、無駄だろうね。
そっちを当たるより、諳さんの犯行が誰によって行われたのかを考えたほうが、犯人に一番近づける。
瀬凪くん、思い出してみて。
あの時、諳さんを殺せた人物は何人いた?」
「えっと、望命くんと冬李さんは延朴塔の最上階にいて、諳さんは眞人くんと一緒に落ちた……。
……!ちょっと待ってよ望命くん……なら犯人は……」
「そう。あの時唯一地上に残っていた……貴女ですよ。
風原 結鶴さん」




