〈file11〉
「ちょっと待って、胡琶くん……!
なら、諳は誰かに包丁で刺されて殺されたって事……?」
「そうです。まぁ、当時から仮説は持ってましたけどね。
ただ、あの頃は眞人の事が心配で何もする気が起きなかった。
だから、今ここで解き明かしましょう、全ての謎を……」
そう望命くんが頬杖をついて言った時、いや、コルリスは君の事務所じゃないんだけど……とツッコみたい言葉を気持ちと一緒に飲み込む。
お客さんは望命くんと眞人くん、それから結鶴さん以外いないからなのだろうか。
店長と麗羽は奥で作業でもしているのだろう。
こちらには出てくる気配は微塵もない。
また巻き込まれたなと思いつつも、僕だって望命くんの解決が何なのか気になったりはするので、彼が話し始めるように言葉で促すと、望命くんは簡単に口を開いた。
「瀬凪くん、僕が話した中で諳さんが死の間際に言った言葉を覚えてる?」
「僕にそれ聞くの、間違ってると思うんだけど……。
……『俺の所為だから仕方ない』、でしょ?」
「そうだ。あんなにも明るかった彼が、どうしてあんな言葉を言ったのか。
その答えを解く前に、この事件の流れをもう一度確認しよう」
まず、クレインサーベイに諳さんからの依頼が届く所からだ。
親友の無実を証明して欲しい、と。
そして、その親友が君島 涼路。
君島さんの犯した罪は殺人。
この街にある包丁研ぎ屋から包丁を盗み、自身の彼女をその包丁で刺して殺害したと言う。
が、実際はその彼女を殺した犯人は通り魔と別にいて、君島さんではない事がクレインサーベイの捜査で明白となった。
彼女が刺された路地裏は人通りが少なく、誰も彼女が刺された所を目撃していない。
そして、君島さんは彼女が刺された当時のアリバイがなかった。
その時君島さんは殺意を否定しなかったけれど、その事についてはクレインサーベイも調べていたから間違いないはず。
その包丁研ぎ屋から君島さんの指紋がついた包丁が出てきたのも、彼の家の包丁だったから。
そして、そんな君島さんの無実を証明すべく、クレインサーベイが上げた証拠を元に諳さんはネットで書き込みを続けた。
彼は犯人じゃない、本当の真犯人はあの時偶々居合わせた通り魔なんだと。
「そして、それから一週間経ったある日、今度は結鶴さんが事務所に訪ねてきた。
行方不明になった弟を探してほしいと」
「胡琶くんにあの写真を見せてすぐ、事務所を飛び出したわ。
そして、諳を探し始めてから10分後、延朴塔の最上階に佇むあの子を見つけたの」




