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「店長〜お疲れ様です。休憩の時間で――って……何してるんですか……?」
11月28日。
いつになっても雪が深々と積もり続けるばかりで、雪かきが中々に大変な今日この頃。
今日、コルリスはおやすみ。
年に一度の大掃除&雪かきの為の日なのだ。
今まで静けさよりも寒気さが勝つ極寒のカフェ外でちょうど雪かきをしていた僕。
厚い上着を何着着重ねても、寒さはそれ程変わりはしない。
マフラーをしていようとも、手袋を身に着けようとも、その寒さは変わらない。
まだ自分の手に着用したままのねずみ色の少し安っぽいけれど、僕にピッタリの手袋越しに握っているスノープッシャーの冷たさが伝わってきてコルリス店内に足を踏み入れたというのに、まだ体はひんやりと冷たさを纏っていた。
上着を厚着しなければ出られない外とは違い、コルリス店内は暖かい。
店長が意外とさむがりだから、冬場はずっと暖房やストーブを点けっ放しにしているのだ。
そんな店長は僕が声を掛けても返事をせずナニカに没頭している店長。そんな店長を被っていたパーカーのフードを取りながら覗き込むと………。
「ん?飾り付けだよ。もうすぐで正月だろう?この方が街の子供達も喜んでくれるんじゃないかと思ってね」
「飾り付けに精を出すのは良い事ですけど、少しは休憩もして下さいよ?店長、それでなくても休憩ほとんどしないんだから……」
「ハハハ。わかった、これを飾り終えたらバックルームでお昼を食べてくるよ」
「まだお昼食べてなかったんですか?もう夕方ですよ!」
もうすぐ訪れる正月の準備をしていた。
僕達がコルリスを営んでいるCRIMINALCITY萬街5丁目は、好奇心旺盛でわんぱくな少年少女達が揃いに揃っており、いつも行事ごとになるとコルリスに来てくれるかも分からないのに、飾り付けやその行事に合わせたメニューを作るくらい張り切ってしまう。
だから、店長が飾り付けを頑張りたい気持ちもわかる。
が、休憩はしてほしい。
今日だって、折角コルリスを休業したのに今の今まで掃除やら雪かきやらでまともにバックヤードに籠もれていなかったのだ。
僕が店長に言い聞かせると、大体は笑って誤魔化されるから分かってくれているのだろうかと疑心になりながらも、掃除道具入れにスノープッシャーを元通りの位置に仕舞う。
上着を脱ぎ、バックヤードにあるロッカーからハンガーを取り出して上着をかけ、またロッカーの中へと戻した。
「………ふぅ……」
ここまで来て、何故か僕は安堵した。
いや、〝何故〟ではない。
安堵したんだ、本当に。
店長に気づかれていない、と。
何故僕がこんなにも怪しい真似をしているのかと言うと……それは昨日、珍しく用事で店長が姿を見せなかった相談所の方の時間にまで遡る―――