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「ならどうしてあんな事態に?誹謗中傷で……?」
「そうね、信じられないわよね。でもね、瀬凪くん。
人間って、愚かで傲慢で、醜いの。
でもねそれと同じくらい、ううん、それ以上に脆く弱いのよ」
「そんな愚かな人達に脆い人は殺されていく―――……。
そして、それは諳さんも一緒なんだよ」
つまり、諳さんはあの暴言や責め立てる文章ばかりの誹謗中傷に心を削がれて、その事を隠すために自分自身をその手で殺した。
飛び降り自殺と言う名の手で……。
大衆でさえ、その自分自身の弱さや脆さを隠すために誰かをターゲットにして中傷をする。
意味のない、愚かな中傷を……。
その中傷で誰かが苦しんでいるかも知れないなんて考えは、思い浮かばないのだろう。
何故なら、いつだって彼らは自分達に都合のいいように立ち回れるストーリーを求めているから。
そして、クレインサーベイと結鶴さんが事務所を飛び出してから10分後だったそうだ。
鉄塔の最上階に佇む覇気のない少年が顔をのぞかせたのは―――。




