〈file6〉
「結鶴さんが来てくれなきゃ、俺は諳さんに〝最期の挨拶〟さえ出来なかったと思う」
「暑かったわね、あの日は私がクレインサーベイに初めて押しかけた日は―――」
事件が起こったのは3年前の今日________7月18日。
その日もカンカンと照りつける太陽のもとで僕は、コルリスの準備をしていた。
多分、望命くん達もそうだったと思う。
準備をしていると、息を切らし、首筋に一つの光を煌めかせた結鶴さんがやって来た。
慌ただしくて、キンキンに冷えた屋内だと言うのに、見ているこちらまで汗を掻きそうな人だったと言う。
結鶴さんが来るまでの一週間は依頼が詰まりに詰まっていた為に、冬李さん、眞人くんはもちろん、望命くんまでもが疲弊しきっていた様だ。
だから、三人の知らない内にネットが、諳さんがあんな事になっている何て事はその当日まで分からなかった。
「結鶴さんに見せられて初めて知ったよ。
俺達が依頼で忙しくしていた間に、あんな事になっていたなんて……」
「諳は一週間も家に帰らず、私たちの知らない何処かで大衆に真実を突きつけていた。
お前らが間違ってるんだ、って……でも、そんな諳を素直に受け止めてくれるほど、あいつらは人間として出来ていない」
これよ、と言って結鶴さんが自身の端末を僕に見せてくれた。
スクリーンショットしたのだろう。
日付がちょうど三年前の今日で止まっている。
その日付の下に書かれたおどろおどろしい諳さんへ向けた誹謗中傷の文章の数々。
彼らは、大衆は自分自身の価値や名誉を守るためなら、人一人を死に追いやる事は笑って行う。
そして最期には、その人を守れなかった探偵や警察にすべての罪をなすりつける。
耐え難いほど醜くて愚かだろう?
でも、本来人間はそう言う生き物なんだ。
表では美しく振る舞っておきながら、裏では平気で他人を罵れるほど浅はかで醜い。
この事件依頼、望命くんはそういった認識の元で人を見るようになった。
―――もう、純粋だった頃の彼には、戻してあげられない




