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「でも、俺はもう彼らに期待はしません」
「それは……諳があんな事になったから、かしら?」
「いえ、諳さんは関係ありませんよ。
……俺たちの〝希望〟は善良な市民にとっちゃゴミ同然なんです。
大衆は事の真実より、常に自分達に〝都合の良いストーリー〟だけを求めている。
誰かの手で都合良く書き換えられた嘘偽りだらけの物語を―――」
その書き換えの役目を果たすものがSNSやメディア、マスコミ等。
あちらこちらにそれは存在する。
善良な市民はいつだってお腹をすかせて待っているのだ。
自分達が都合よく立ち回れるストーリーだけを―――。
諳さんも、そんな彼らと対峙したから亡くなった。
大衆にとって、自分達が誹謗中傷した事でこの世の何処かにいる誰かが亡くなった事は気にする事すらない〝どうでも良い事〟なんだ。
最後まで彼らを信じていた純粋無垢な望命くんでさえも、物語終盤に起きたあの事故でその無垢な心は黒に染められてしまった。
「依頼を継続してほしいと諳さんに頼まれたあの日から一週間後、今度は事務所に結鶴さんがやって来た。
俺達に最悪の結末を添えて、ね―――」




