表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローになりたくて  作者: CANA.
⚠day12 - recurring nightmare【クレインサーベイ:trivial case】⚠〈本編〉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/93

〈file4〉

(そら)さんがクレインサーベイに来たのは朝方、まだ事務所を開く準備を三人でしていた頃だった。

明るくて元気で、でも何処か苦しそうな彼の顔を、俺は今尚憶えている」




明るくて元気で、何処か苦しそう、か。

昔の眞人くんに似ているな、何て思ってしまうのは僕が彼らを知らないからなのかな。


クレインサーベイへの依頼は「ある少年の無実を証明して欲しい」と言うもの。

そしてその少年が君島涼路(きみじま すずる)

君島さんと諳さんは中学校からの同級生だったそうで、望命くんはその依頼を引き受けた。


無実の証明は、犯罪の証明よりも難しいと言うのに。


深く考えず彼は引き受けた―――。




ここで一つ、疑問が浮かんだ人もいるだろう。

〝無実を証明して欲しい〟と探偵に頼むには、その少年が何らかの罪を着せられている事が前提としてあるのだ。

なら、君島さん()の犯した罪とは何なのか。


君島さんの犯した罪は殺人。

それも、この街にある包丁研ぎ屋から包丁を盗み、自身の彼女をその包丁で刺して殺害したと言う話しだ。

が、実際はその彼女を殺した犯人は通り魔と別にいて、君島さんではない。


彼女が刺された路地裏は人通りが少なく、誰も彼女が刺された所を目撃していない。

そして、君島さんは彼女が刺された当時のアリバイがなかった。

これ以上わかりやすいシナリオはないだろう。


その時君島さんは殺意を否定しなかったけれど、その事についてはクレインサーベイも調べていたから間違いないはず。

その包丁研ぎ屋から君島さんの指紋がついた包丁が出てきたのも、彼の家の包丁だったから。




「でも警察は捜査せず、決めつけで君島さんを実刑に……?

少年事件にしては少し重い判決だと思いますけど……」


「そうね。でも、善良な市民(世間)はそれを、厳罰を望んだわ。

そして、判決は実刑。どうしてだって諳も嘆いていたの」


「捜査するのが遅かったんだ。

その事件が起きた直後、捜査していれば……」



「それは違うわ。

胡琶(くるは)くんたちの所為じゃない。世間の、彼らのやった事よ」



君島さんの判決が下された後なら、その事件をいくら捜査して、証拠を見つけたとしても彼の罪は消えたりしない。

それに、君島さん自身が殺意を否定せず、黙秘している。

クレインサーベイに出来ることはもう、ここまで。

諳さんに依頼を達成できなかった事を望命くんが謝罪すれば彼はこう言ったそうだ。



「『依頼は継続させてほしい。捜査はできなくても、世間にそうじゃないって証明しなきゃいけないから』って⋯⋯。

そんな事しても、諳さんが傷つくだけなのに⋯⋯でも、その時の俺も信じていたんだ。




世間が、彼らが変わってくれると―――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ