〈file2〉
「へぇ〜、コルリスって中はこんな感じなんだ〜!
綺麗なカフェなのね〜」
「結鶴さん……!どうしてコルリスに……」
「え、望命くんの知り合い?」
「あぁ、ごめんなさいね。私、こう言う者なの」
そう言って白いタートルネックの上に、肩から焦げ茶色のジャケットを羽織った彼女が僕に差し出してきた昔風なその紙の名刺には、名前と職業が書かれてあった。
名刺を見る限りだと、名前は風原 結鶴さん。
この街の有名な大手企業でライターをしている様だ。
そして、何故か望命くんらと知り合いだと言う。
突然やって来たワケアリの訪問者に取り乱してしまった僕は、一度咳払いをしてから彼女……結鶴さんを望命くん達と同じカウンターの一席に案内した。
「久しぶりね、胡琶くん。
樹羅くんは……初めまして、よね?」
「えぇ、確か……」
「その節はお世話になりました。
それと……すみません」
「いやね、どうして君が謝るの!
お世話になったのはこちらの方だし、謝らなきゃいけないのも、私なのにね」
この望命くんのただならぬ雰囲気、絶対依頼人やその事件関係者の筈なのに眞人くんとは初めまして……。
あぁ、そうか。
彼女はあの「nightmare that never ends」の関係者、か。
そう思いながら僕は彼女にコーヒーを差し出し、窓の外に視線を移すと、〝壊れた鉄塔〟が顔を覗かせる。
望命くんが大人にならざるを得なかったあの3年前の悪夢……。
だとすれば、眞人くんとは初めましてと言うことにも合点がいく。
彼があの事件から一年後目覚めるまで記憶を失くしているからだ。
クレインサーベイに一つの大きな影を落とした、あの事件―――。
ちょうど今日で三年。
「どうして俺達がここにいるとわかったんですか?
事務所に書き置きとかも残してなかったはずですけど……」
「分かるのよ、あの事件が起きた日にいた同じ場所にいたくない、って思う気持ちは。
私もそうだし、だから君のお気に入りだって言うこのカフェに来てみたの。
まぁ、本当に胡琶くん達がいるとは思ってなかったんだけどね!」
「……もう、三年も経つんですね。
あの凄惨な事件から―――」




