〈file7〉
「ちょ、冬李さん強いっ……!」
「ふはは、私は手加減なんてしないよ」
「うぅ〜っ!……あー!また負けたぁー!」
「・・・は、?」
目の前に広がった目を瞠る光景に、僕らは呆然と立ち尽くす。
点けられた電灯、ホログラムに映し出されるドライビングシュミレーションゲーム、そしてYOU LOSE、YOU WINの文字。
そのホログラムの前に錆びれた椅子に座っている二人の人影。
「と、とと、冬李さん!?」
「あれ、望命と瀬凪くんじゃないか。今日は休みだろう?」
「そう……じゃなくて……え、何してるんですか……?」
「見て分かる通りだが?依ちゃんとここでゲームを」
「……最初から説明お願いします……」
コントローラーを手に持ったまま、二人は僕らのいる後ろへと振り返った。
その二人の内の一人は、クレインサーベイの助手でもあり、望命くんの叔父でもある夏阿冬李。
そしてもう一人は捜索願を出されている失踪した少女・黒羽 依だった。
望命くんが説明をお願いすれば、冬李さんは至極当然の様に昨夜の事を語りだした。
昨夜、忘れ物を取りに事務所に戻った冬李さんは、扉の前で蹲る依さんを保護。
事務所で事情を聞こうとしたが、依さんに聞く前にすやすやと寝息を立てて寝てしまっていたので、今日聞こうと思っていたのだが、忘れてしまっていて、今に至る。
この様子じゃ、警察にも連絡していない様だ。
ドアノブに傷が付いていたのも、鍵を引っ掛けてしまったから出来たものらしい。
そこで、僕は違和感を感じた。
依さんの身体に、無数の痣と傷がつけられていたからだ。
家から飛び出して来ただけで、こんなにも傷が出来るとは考えにくい。
なら……。
「……冬李さん、警察には?」
「まだだ。忘れてしまっていたからな」
「……じゃあ、ここで良いか」
「?何が?」
「決まってるでしょ。さぁ、〝裁きの時間〟だ―――」




