〈file6〉
「はぁ……はぁ……良かった。
取り敢えず、事務所にはいないみたい……」
「……」
「?瀬凪くん、どうかした?」
「……昨日の夜って、僕ら二人が最後にここを出たよね?」
「うん、そうだよ。俺が鍵閉めて……」
「なら、やっぱりおかしい」
僕らが息づく事も忘れる程、急いで望命くんの事務所、基クレインサーベイに向かったのだが、その事務所の玄関には、誰もいなかった。
だが、僕が感じた既視感はそこじゃ無い。
茶色い外装、白い扉、玄関前に積まれたレンガが小さな段差を作っている。
昨日の夜、僕はクレインサーベイへやって来ていた。
先日起きた爆破事件の事を詳しく調べるためだ。
眞人くんは怪我をしているので部屋で。
特に依頼は無いからと、先に僕らを置いて冬李さんはここを出た。
最後に事務所の扉の鍵を閉めたのも、電灯を消したのも、全て望命くんだ。
なのに、ドアノブの端に昨日は見なかった真新しい傷が付いている。
「……年の為、事務所に入ってみよう」
「わかった。せーの、で開けるよ?」
「うん」
ガチャり、と開かれた扉の向こうに広がったは……。




