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「……で?
張り切って『僕らで解決しよう!』とか啖呵切った割には、あれからな〜んにも起こらなかったわけだけど……」
「まぁ、爆弾が止まったのは良いことだよ」
伊馬さんが相談所に来てから2日。
僕、望命くん、眞人くんの3人は、昼頃、望命くんの部屋でこの一週間の出来事を話し合っていた。
今日はクレサイの休業日だったらしい。
伊馬さんと彼のお母様には、先日僕と店長で例の生徒手帳を持って行った。
爆弾で千切られた挙げ句、炎で焼き焦げた生徒手帳を。
お二人は何も言わなかった。
僕らを責めるでもなく、慰めるでもなく、その手帳を受け取った。
お母さんの方も、彼が生徒手帳を紛失していた事は知っていたようで、学校に連絡して新しい生徒手帳を用意してもらったらしい。
が、本題はここじゃない。
何故、どうして、あんな所に伊馬さんの生徒手帳が落とされていたのか、だ。
通学で使う道ではないと言っていたし、あんなトンネルが存在していたことすら、お二人は知らなかった様だった。
そして、その生徒手帳が落とされていた場所でその日、一つ目の爆弾が爆発した。
偶然にしては出来すぎている。
が、偶然が重なって起きる悲劇もあるので、あまり考えないようにしていた。
「そう言えば眞人くん、痛みはどう?」
「まぁ、ましになってきた、かな。まだ痛いんは痛いんやけどな〜。
……てか瀬凪くん、みことの前でその話しは―――」
肋を抑え、顔を歪めて僕の問いに答える眞人くんの頬に、痛みと焦りによる一滴の冷や汗が伝う。
その視線の先にいるのは今まで顔を上げていた望命くんの俯いた姿。
僕が何のことか分からず、尋ねようとすれば今度は望命くんが口を開いた。
「……めんね。ごめんね、眞人〜〜〜っ」
「ほらー!!こうやってめんどい事になるから言うなって言ったやーん!」
「あー……ごめん」
隣に座っている眞人くんの腕にしがみつきながらしきりに謝る望命くん。
自己嫌悪に満ちたその顔で眞人くんを見やると、彼は一つ溜め息を零した後、赤茶色に染まったふわふわな望命くんの髪を自身の大きな手でくしゃり、と撫でた。
眞人くんに撫でられれば、次第に望命くんの顔はいつもの笑顔へと戻ってゆく。
3人で雑談していると、店長が赤く光る端末を開いたまま、僕らの元へやって来た。
「店長?どうかしましたか?」
「最近、この萬街に見ない顔が増えただろう?」
「確かに、元々このCRIMINAL CITY内の中では子供の多い街ではありましたけど、最近増えてきているような……」
「そこで、君たちに依頼だ。ある少女を見つけて欲しい、と言うな」




