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住友さんの言葉に立ち止まっていた身体が咄嗟に動き出す。
管理室の扉を震えるその手で力強く開けて扉の先にある地上までの長い長い螺旋階段を無我夢中で降りていく。
降りている最中にも、何回か何処かで爆発音が鳴り響いたと言うことは、トラブルで起きた爆発じゃなく、実に計画的で犯行性のある物だ、ということになる。
計画性で犯行性のある爆弾事件......何だろう、聞き覚えがあるような気がする。
「あ、おい、瀬凪……!」
伊馬さんに声を掛けられていたことを、僕はこの時は知らない。
螺旋階段を降りた後、その目の前にある歩道橋を渡り角を曲がった所に確かにあの大きな茶色いトンネルはあった。
住友さんの言う通り、粉々に崩れ落ちて尚、燃え盛っていたそのトンネルが。
そしてその赤く燃える炎の奥に焼けた伊馬さんの名前と写真が貼ってある生徒手帳も見えていた。
今取りに行く事は危険だ。
取り敢えず救急と消防に連絡してから、本部にいる望命くんにも……そう思い、端末を開くとある人から電話が掛かってきた。
「もしもし」
『瀬凪くん!?爆発音何回も聞こえたけど二人とも無事何か!?』
「うん。僕と伊馬さんは無事だよ」
『なら良かった……。もう警察と救急、消防には連絡してるから、取り敢えずコルリスに戻って来た方がえぇ!
……店長と待っとるからな』
「うん、ありがと」
やはり電話の主は眞人くんだった。
金魚が水槽を飛び出した様な声で僕らが無事か確認して来る。
無事である事を伝えると、身を乗り出した様な声では無く、落ち着いた声で話し始める。
電話している途中にも、サイレンの音が街に鳴り響いていたので、誰かが通報してくれていた事は分かっていたが、眞人くんだったとは……。
いくら体力は無くても、流石はあの胡琶望命の助手。
通報も早いし、避難誘導だってお手の物だ。
赤い消防車と並走してパトカーが近くにやって来たことを確認した僕は、伊馬さんを連れてコルリスへと帰るため、そっとその場を後にした。




