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「てか、俺眞人の事何処かで見かけたことあるなって昨日から思ってたんだけど、お前、あのお人好し探偵について回ってた変な助手だろ!」
ここは萬街、2丁目の歩道橋。
伊馬さんが生徒手帳を落としたと思われる道の近くだ。
僕、伊馬さんは昨日の約束通り、生徒手帳を探す為、まずは監視カメラを見せて貰いにある施設を目処にゆっくりと歩いていた。
そんな時、ホログラム上に映し出された眞人くんに向かって、伊馬さんは声を掛ける。
どうやら、2人は望命くん関係で知り合いの様だ。
確かにクレインサーベイは街の見回りもしていたな、といつかコルリスで使うコーヒー豆を買いに出た時に見た望命感の姿をくっきりと思い浮かべる。
地域密着型の事務所だから、何かと街人に接触する事も多い。
伊馬さんに声をかけられた眞人くんは心外、とでも言うようにその映し出された頬を膨らませていた。
『変な助手って言うな!!
一応プレベントに所属しとるちゃんとした助手なんやで!』
「あれ、伊馬さん、あのお人好しだけど何かと人に無理難題を押し付ける探偵と知り合い?」
「お、おう。……瀬凪、もしかして怒ってる……?」
『もしかしなくてもみことに怒ってんねや……。
察しろ……』
ギャアギャアとホログラム上でも騒がしい幼馴染に僕は自然と肩を下ろしてから、僕も伊馬さんに声を掛ける。
ニコッ、と一見人畜無害ですよと言わんばかりの笑顔を伊馬さんに向けては、その男に見えない顔からは想像出来ないほどの毒を吐いた。
そんな僕に後退する伊馬さんの言葉に眞人くんが言葉を加える。
今回の事は仕方がないから良いとしても、これまで望命くんに事件現場だの、変な依頼だの、無茶振りだのに付き合わされた僕の身にもなって欲しい物だ。
疲れる所じゃ無いし、たまぁ〜に心の底を抉られる事件にも連れて行かれるから溜まったものじゃないんだよ。
今度一緒にカフェ行ったら僕の分も、麗羽の分も、眞人くんの分も全部奢らせてやる。
「さ、着いたぜ瀬凪」
「よし、眞人くんから貸して貰ったサイレントバッジはあるから、さっそく入ろうか」
「おう」
『クレサイと望命や俺の名前は使ってえぇけど……、クレサイ〝らしく無い〟ことはせんといてや!』
「うん、もちろんだよ」
『じゃ、一旦切るで』
そう言ってホログラムに映った眞人くんはサァーッと吹いた春風の中に消えて言った。
何千年か前にスマートフォンやデジタルウォッチ等が大流行してからと言うものの、持ち運ばなくてもいい機能が備えられたチョーカーが開発された。
が、チョーカーを着けたがらない人も続出した為に今のホログラム状の半透明な画面を映し出せる様に人間の身体にとあるチップが埋め込まれる様になった。
今でもどうしてそのチップのお陰でこの機能が使えているのか、本当に謎である。
僕らは螺旋階段を登った先に建てられたこの路地を管理している管理室の少し錆びた扉のノブに手を掛けた。




