〈file2〉
―――翌日
「ほんっっっっまにすまんな……瀬凪くん……」
「いや……眞人くんの所為じゃないでしょ。
元はと言えば全部望命くんn―――」
「カフェ・コルリス」閉店時間後、「相談所・コルリス」を開くための準備をしている僕に奥の客席へ腰掛けている眞人くんが何度も謝ってくれていた。
部屋で1人でいるのは退屈だろうからと、僕がここに連れてきたのだ。
望命くんの所為、そう言葉を続けようとした僕は眞人くんの声によって遮られた。
「いや、俺の所為や。
あん時、夜やのに警戒せずに襲わせたから、こんな事になってもうた……。
みことは俺の事心配してくれてるだけや……。
せやからっ……」
「……わかってるよ」
幼馴染である胡琶望命信じて疑わない。
それは信頼と言うよりは重い何か。
慈愛の篭った様な目で僕を見つめる眞人くん。
その目がどんなに強い意志を持っているかわからない程、僕の記憶は落ちぶれていない。
全く、僕の幼馴染は何時まで経っても変わらないなぁ。
望命くんと冬李さんがプレベントへライセンス更新に行っている2日間、僕と店長は怪我をした眞人くんを一時預かることになった。
毎月あるライセンス更新。
僕や店長も一応プレベント内の店に所属していると言うことで行かなければならないのだが、今月は探偵や助手とは別日に設定されていたので店長は望命くんの頼みを二つ返事で受け入れたのだ。
もちろん僕は断って欲しいと店長に言っていたのだが、そんな僕の頼みは断られてしまった。
あの紅い瞳に捉えられてしまえば、もう逃げる事は出来ない。
何処か見透かす様な強い目線。
望命くんのレッドサファイアの様な煌びやかな朱色じゃなく、僕の夏の気にぶら下がったオレンジみたいに輝く色でもなく、眞人くんの様に木から落ちるまだ色を保ったままの葉の色でもない、黒みを帯びた紅。
あの瞳に見据えられてしまえば、隠したいことも喉奥から引きずり出される様に心を黒鉄で包まれる、そんな胸騒ぎが僕を襲う。
不意に玄関に掛けてある時計を覗くと、短針はもう8を指していた。
外はもう夜の帳が下りているし、良い時間だ。
「―――さぁ、「Consultation center・colrisu」開店の時間だ―――」




