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「―――で、瀬凪くん?あれからあいつとはどうだい?」
「あいつ?」
「ほら、君の実父だとわかった……」
「店長ですか?うん、今までより距離が縮まった気がします!」
「そうか、なら良かったよ」
店長が僕の父だと判明してから数日。
ここ数日は相談所・コルリスへの大きな依頼も、ざわめく事件も起きていなかった為、比較的穏やかに過ごせていた。
そんな今日は、カフェ・コルリスへ珍しいお客さんが訪れてくれていた。
望命くんの叔父であり、店長の幼馴染でもある夏阿冬李さん。
店長より一つ年上だと言うのに、その外見は20代さながら。
街ですれ違えば、年齢を悟らせない外見とのんびりとした穏やかな性格に、振り返る事間違いなし。
普段から望命くん、眞人くんとは一緒に来てくれるものの、あまりここへ一人では来ない冬李さん。
数日前、僕らを騒がせた女であり、クレサイへの依頼人でもあった池浦さんの話しも冬李さんは知っていたから、今日は僕の様子を見に来てくれたのだろう。
店長が裏で皿洗いをしてくれている間に僕は冬李さんにコーヒーを差し出すと、冬李さんが僕に声をかけて来た。
「そうだ、瀬凪くんに聞きたいことがあるんだが、良いかい?」
「?えぇ、僕に応えられることであれば……」
「一昨日から望命達と会っていなくてね。
こちらには帰っているかな?」
「……そう言えば、僕も昨日の朝から望命くんと会っていません。
こっちにも昨日の朝出てったっ切りです」
「……何かあったのだろうか……」
冬李さんの質問に言葉を返すと、彼は心配そうに眉を下げた。
冬李さんがコルリスへ来たのも、探偵ともう一人の助手が帰って来なくなってしまった為に、急遽クレサイを休まざるを得なくなってしまって、望命くん達がこっちに帰ってきているのか確認する為だと言う。
行方不明になってしまった幼馴染達を心配しつつ、カランカラン、と明るい鈴の音が鳴ったコルリスの扉に目を向けた。
何故なら、鈴の音が鳴っただけで、その扉の先にいるはずのお客さんが店内へ入ってこなかったからだ。
「いらっしゃいm―――望命くん!?」
「瀬凪くん、ごめん。開けてくれる?」
「う、うん」
「私も手伝おう」
「その声、冬李さん?よかった、コルリスに来ていたんですね」
扉の向こうで僕に助けを求める望命くんは、何処か切羽詰まった様な声をしていた。
行方不明だった幼馴染が見つかった喜びと、そんな望命くんが何処か不審に感じて、僕は言葉に詰まる。
ここで僕はある疑問に辿り着いた。
―――眞人くんはどうしたのだろう、とね。
取り敢えず今は僕に助けを求めている望命くんをコルリスへ入れるために扉を開けた。
すると……。
「はい、どうぞ、望命k―――眞人くん!?
どうしたの、その腰……!」
「はは……、ま、詳しい事情は入ってから話すわ……」
「取り敢えずコルリスに入れてくれる?」




