〈file4〉
店長と作った店。
店長と作った空間。
店長経由で友達になれた望命くんと眞人くん。
店長と過ごしたこれまでの日々。
全てが見たことのない走馬灯の様に蘇ってくる。
僕の宝物だった街も、店も、店長と過ごした時間も、全部。
幼かったあの日、店長に説明された時のことでさえ。
―――君に親はいない、瀬凪くんは捨てられたんだよ
そう教えられた筈なのに、なのに……。
色々な感情が込み上げてくる喉を抑えて、振動する唇を噛み締めて、店長へ一言だけ疑問を投げ掛けた。
「……店長は、僕のお父さん、何ですか……、?」
「……」
「答えて下さいよ、店長……!」
「……そうだよ……」
「……っ」
黙ったままの店長がやっとの事で口を開いたのは1分以上経った後だった。
僕はずっと騙されていたのだ。
店長にも、ずっと事情を知っていたであろう冬李さんにも。
店長にも事情があるのはわかってる。
僕より大変だった事も、そんな店長にずっと寄り添っていた冬李さんの事も。
でも、〝そんな嘘〟じゃなくて何か一言、言ってくれても良かったのではないだろうか。
〝捨てられた〟じゃなくて、〝親は亡くなった〟とか、それなら、それなら僕は……。
誰かに愛された事が無い何て思わなくても済んだのに。
いや、それは僕のわがままか。
店長は自分のことを親だと思わなくて良いとずっと口にしていた。
親になる資格が無いとでも思っていたのだろう。
そして、そんな店長達に僕はまんまと騙されていた訳で、昨日までは彼らの思い通りに事は進んでいたのだろう。
それが、ずるいなぁ……。
そこまで僕や望命くん達も騙し続けていたのだから。
僕と店長が黙れば、今度は僕の前にいる女が口を開き始めた。




