〈file3〉
不意にそう思ってしまえば、もう僕の足を止める物はない。
抑制する望命くんも、忠告してくれる眞人くんも振り切り、僕は2人の間に立つ。
「……店長」
「!瀬凪くん……!?どうしてここに……」
「翠……?翠じゃない!お母さんよ、会いたかったわぁ……!」
「おかあ……さん……?」
「沙蘭、止めないか……!」
驚く店長も気になるけど、今は池浦さんだ。
僕を見て頬に綺麗な光を流す。
何故泣いているのかは分からなかった。
僕?を呼んで抱き締めてくる池浦さん。
翠……、それがこの人の決めた僕の名前。
抱き締められても、僕の顔は強張ったままで、瞳にはこちらを心配そうに見て足を踏み出そうとしている望命くんと、そんな彼を止めている眞人くんが映った。
少し考えようと目を閉じても今の情景に頭が追いつかない。
この人が僕の本当のお母さんだとして、そのお母さんと親しそうにしている店長。
この人の名前も知っているようだし、なら、なら……。
僕の首に回された池浦さんの手を掴んで優しく放すと、今度は店長に向き直る。
「待って下さい。
店長、この人が、もし、もし本当に僕のお母さんなら……店長は……っ」




