〈file2〉
「ほら、彼処の電柱の傍に立ってる女性だよ」
「あの人が……。やっぱり見たことないなぁ……」
翌日、僕は望命くんに頼み込みその女性を見させ貰っていた。
ちょうど店長が外出した時に2人がコルリスを訪ねてくれたので頼んだのだ。
僕らが今隠れている場所は萬街4丁目のコンビニエンスストア近くの自販機の裏。
コルリスからは少し遠く、どちらかと言うと望命くんの事務所の方が近いのかも知れない。
その自販機の裏から見える位置にある一つの電柱。
そこに立っていたのは儚げな尾を持つ一人の女性。
何度も時間を確認しながら端末で何かを見ているようだった。
「と言うか、店長に外に出るなって昨日言われたばかりなのに、ここに来て大丈夫なの?」
「・・・。確かに!」
「おいおい……」
「ま、何とかなるっしょ」
「ほんまか……?」
望命くんの問いのおかげで店長から言われていたことを思い出す。
後でする言い訳を考えつつ、視線を女性へ戻した。
すると依頼人さん、基池浦さんは誰かを見かけたのか、血相変えてそこから離れて行く。
その彼女を自然と目で追うと……。
「店長……、?」
そう、僕の視界に映った池浦さんの前に居たのは店長だった。
今買い物から戻ったのだろう。
手にはたくさんの食材を入れた大きなスーパーの袋が2つ、握られていた。
僕が啞然と突っ立っていると、後ろから望命くんに腕を引かれた。
流石に今出て行くのはまずいということで彼の後ろに隠れる事にする。
「な……っ!」
「どうして……店長があの人と……?」
「瀬凪くん、今出ていくのはまずい。
もう少しここで様子を見てよう?」
「っ……うん」
僕らが口々に意見を交換し合っていると、池浦さんが店長に掴みかかるのが見えた。
やはり2人は知り合いなのだと僕は察する。
店長がそんな池浦さんに何も言わずに黙っていることも含めて。
望命くんが僕の苗字と池浦と言う苗字を繰り返し小さく口にしていたが、何か意味があるのだろうか。
僕のことはいつも店長がしてくれていた。
僕に現実を見せまいと、率先して行ってくれていたのだ。
でも、今日はこんな光景を僕自身が目の当たりにしてしまった。
……あぁ、やだなぁ……このままここで待機何て。




