〈file3〉
「むむむむ……」
菊池さんが来てから1日経った12月10日。
真冬の凍てつく空気の中、僕は1人、街に繰り出していた。
今日、僕は店長に頼まれた菊池さんの後を朝から付け、ストーカーが手を出したらすぐに駆け付けられる様にしている。
端から見たら僕が菊池さんのストーカーに見えるだろうけれど……。
疑われたとしてもしょうがないよね。
今日、菊池さんはお仕事はおやすみ。
髪を切りに行ったり、エステをしに行ったり、美容dayだそうだ。
さすがに僕もお店の中までは入れないから、お店の外で菊池さんを待つ予定。
そんな事を考えながら菊池さんがお気に入りの美容室の扉の前で待っていると、僕と同じ様に美容室の扉の前でキラキラと金色に光るいかにもお金持ちが持っていそうな時計を、1分に1回程度見ながら、何かを待っている大柄の男性がいた。
その男は何処かで見たことがあるような、無いような、既視感のある顔だった。
カランカラン!
「ありがとうございました!」
鐘の音が僕の耳に届いた時にはもう、菊池さんは美容室から出て来て、細く長い一本道を歩き出していた。




