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ヒーローになりたくて  作者: CANA.
@day7 - 新たな一歩を踏み出す為に【クレインサーベイ:trivial case】

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38/93

〈file4〉

「う〜ん……、出るわ出るわ証拠の山ってとこかなぁ……。

奥さんが浮気に気づいていることも知らずに呑気なもんだ……」




天堂さんを尾行する事数時間。

僕には昨日、仕事と偽っておきながら、見せられた奥さん以外の女性とご飯だの、カフェだのに連れていき、最後には部屋にまで連れ込んでいた。

端から全ての情報を鵜呑みにする事は良くないと思っていたからこうして尾行に出たものの、案の定、望命くん達の教えてくれた情報が正しかった様だ。


天堂さんと彼の横に並ぶ鼻が高くて目も丸い綺麗で大人しい女性。

一応証拠の写真を何枚か端末に収めておいたので、後でクレサイに提出しようと思う。


もう天堂さんの近くに長居は無用と判断した僕は、店までの道をゆっくりと重い足取りで歩いて帰ったのだった。




「店長、ただいまです〜」


「お、瀬凪くんやっと戻ってきたね!おかえり!

外回りにでも行ってきたの?」


「あれ、東野の大将と皆!

どうしたの?こんな昼間っから」


「いやね、最近瀬凪くんも店長も疲れてるように見えてたから仕事を休んで2人が好きそうなボードゲームを持ってきたんだ!

どうだい、一度やってみてくれないか?」


「おぉ〜、そういう事ならやっちゃいましょうかねぇ!」




カランカランと、綺麗な鈴の音が店内に鳴り響くと同時に、ここ、萬街で有名な弁護士兼コルリスの常連客である東野國唯(とうやくにただ)さん基東野の大将と、その東野の大将()の下で働くパラリーガル(法律事務職員)のみんなが僕の名を呼んだ。


皆とても優しくて、信頼できる良い常連さんだ。

裁判では負け無しの大将は皆からの信頼も厚い。


望命くんと瑠依ちゃん(探偵が2人)に、眞人くんと冬李さん(助手が2人)東野の大将(弁護士さん)が通うカフェかぁ……、僕達は常に料理を提供しているだけで何もしていないのに、自然と鼻が高くなる。


ゴソゴソと自身の鞄から大きなボードゲーム、通称ボドゲを取り出しジャジャーン!と僕に見せてくれる大将。

〝一攫千金、賭けたら終わり!〟と書かれたイマドキ珍しい紙の人生ゲームは、僕の興味を惹きつけるには十分なものだった。


最近は重く苦しい事件が続いていたからその事で疲労していたのだろう。

顔に出過ぎていた様だ。


ぐっ、とガッツポーズをして見せ、僕は大将達が座っている畳の上に座ろうとしたのだが……パジャマのまま外に出た事を忘れていた為、一旦その場を離れてバックヤードで着替えることになった。




「お待たせ〜、やろやろ〜!」


「よし、じゃあ駒をわたしてっと……」


「あ、そうだ、東野の大将。

ちょっと話が―――」




コルリスの制服に着替え終わった僕は、みんなが座っている畳に座布団を敷いて座った。

大将に一番最初に雇われたパラリーガルの一人である竹永さんが駒を全員に配る。


僕は昨日、今日の事を思い出し、東野の大将に話をする。

コルリスに奥さんが浮気していると真っ赤な嘘を吐いて依頼してきた男性の事。

その男性の奥さんがクレサイに素行調査を依頼していた事。

クレサイが丁寧に捜査した結果、その男性は結婚詐欺師だったと言うこと。

実は浮気もしていたと言うこと。

浮気の証拠は僕もクレサイも所持しているという事。


全ての話が終わるまで、大将は首を上下にして頷きながら真剣に聞いてくれた。


そして―――。




「―――って事でさ、一応証拠は揃ってるから旦那さんを訴える事は出来るとは思うんだけど、萬街(この街)の弁護士って、大将しかいないじゃん?

でも大将に依頼するには結構なお金が必要だし……だから……その……」


「……値下げして欲しいって?」


「そうそう、値下げ!だめかな?」


「普通は駄目だね。でも―――」




浮気の慰謝料請求は通常だと弁護士に依頼する為の費用に交渉や調停、訴訟の段階によっては10〜30万程かかるが、この|犯罪都市《CRIMINAL CITY》では弁護士に依頼すると倍以上の値段になる。

それもこの萬街で一番有名な大将となると……考えるだけでも恐ろしい。


だから僕が値引き交渉をしたのだが……上手くはいかなかったようだ。

だが、と大将は話を続けた。




胡琶(くるは)の事務所と連携して裁判を起こしたりするなら、プレベントが費用の3分の2は負担してくれるから依頼人が支払う通常の値段よりも安く付くよ」


「そっか……!何年か前に法律が改正されたもんね!」


「うん。だけど、胡琶が私の事務所を紹介してしまうと弁護士法違反になってしまう事には変わりないから、そこは気をつけてね。

まぁ、胡琶ならわかってると思うけど」




人生ゲームを続けながら話す僕と大将。

サイコロを振り、何マスか進め、そこに書いてある指示通りにして次の人に順番が渡る。

それを何度も何度も繰り返しながらも口を動かすことは止めない。


数十年前、法律が改正された。

このCRIMINAL CITYでは犯罪がどこの国よりも多いから、プレベントに所属する事務所がその依頼人から素行調査、浮気調査等の依頼を受けていれば弁護士がその事務所と連携して裁判を起こせる。

そうすると、弁護士費用はプレベントが3分の2程負担してくれるため、通常の値段よりは安価になる。


まぁ、それも国の特別な審査が無いと出来ないのだが、決してプレベント内で解決件数が一番少ないから無理何て事にはならない。

当たり前だ。

それに、望命くんはプレベントが解決件数な数えないような事件ではない自殺や小さな依頼ばかり請け負っているから最下位なだけで、事務所に依頼された事件の解決件数はどこの事務所よりも多いのではないだろうか。


組み立てられれば、後は人生ゲームだ。

堕ちる時もあれば地に足をつけられる時だってある。




「……わかった。望命くんには僕から話をつけるよ。

大将は取り敢えず明日クレサイに行ってみて!」


「わかったよ」

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